heritage division遺産分割一般

遺産分割の際に相続人に未成年者がいた場合~特別代理人の選任~

2022.02.02

 

「相続」という言葉は分かっていても、実際にどのようなことをするのかについてはあまりイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか。

「相続」で問題になることの1つとして、「亡くなった方の遺産をどうやって分けるのか」という問題があります。
遺言書がある場合には、基本的に遺言書通りに分けることになります。
他方で、もし遺言書が無い場合には、相続人皆で話合いをしなければなりません。

この「遺産を分ける話合い」において、未成年の方がいる場合はどのような手続きが必要になるか、ご存知でしょうか。
今回は、未成年者の方が遺産分割の話合いに加わる際に必要になることがある、「特別代理人」について、ご紹介したいと思います。

 

ご相談事例

 

例えば、ある方が亡くなられたとします(亡くなられた方をXとします)。
亡くなられた(被相続人)Xには、妻Yとの間に2名の子(AとB)、前妻Zとの間に2名の子(CとD)がおられるとして考えます。

この場合、Xの相続人は、現在の妻Y、その子2名AとB、それから前妻Zとの間の子2名CとDの、計5人です。

・被相続人…X
・前妻…Z

<相続人 5名>
・妻…Y
・妻Yとの子…A(未成年者)、B(未成年者)2名

・前妻Zとの子…C(未成年者)、D(未成年者)2名

 

Xの遺産を相続するには、この5人で話合いをし、「遺産分割協議」をまとめる必要があります。
しかし、今回重要なのは、被相続人X及び妻Yの子らがいずれも未成年者という点です。

遺産分割の際に相続人に未成年者がいた場合~特別代理人の選任~

未成年者と遺産分割協議

ここで、未成年者について少しご説明します。
未成年者が法律上の行為をするには、その法定代理人の同意が必要です。
また、未成年者が同意なく行った法律上の行為については、取り消す(無かったことにする)ことができます。

法定代理人とは、ここでは親権者をイメージして頂ければ大丈夫です。
そのため一般的に、未成年者が法律上の行為を行う場合については、後から取り消されてしまっては、契約の相手方もたまりませんので、最初から親権者の同意を得なければ契約に応じない場合が多いです。

少なくとも、不動産の売買契約などのように高額の買物の場合には、後で簡単に取り消されては困りますので、通常、親権者の同意がない限りは契約してもらえません。

それでは、遺産分割協議はどうでしょうか。
遺産分割協議は、亡くなられた方の遺産を分ける協議であり、非常に重要なものです。
後で協議が取り消されてしまったら、せっかく皆で話し合って決めた遺産の配分が無かったことになりますので、そのような事態は避けたいところです。

そのため、未成年者がいる場合には、親権者の同意、又は親権者が未成年者を代理して、遺産分割協議を行うのが通常です。
一般的には、親権者が未成年者を代理して(未成年者に代わって)遺産分割協議を行います。

しかし、ここで問題が生じます。
今回の件で考えてみましょう。

今回の相談者Yは妻であり、亡くなられたご主人Xには離婚した前妻Zがいます。
そして、先程申し上げた通り、ZにはCとD、YにはAとBの子がいます。
A~Dはいずれも未成年者です。

この場合、亡くなったXの相続人は、先程お話した通り5名(Y、A、B、C及びD)となります。
AとB、CとDはそれぞれ未成年ということですから、5名で遺産分割する場合には、AとBの代理をYが、CとDの代理をZがすればいいということになりそうです。

・被相続人…X
・前妻…Z

<相続人 5名>
・相談者 妻…Y
・妻Yとの子…A(未成年者)、B(未成年者)2名

・前妻Zとの子…C(未成年者)、D(未成年者)2名

 

しかし、ここで考えて頂きたいことがあります。
遺産を分けようとするときに、Yの受け取る遺産を多くすればするほど、AやBの受け取る額が減ることになります。

つまり、遺産分割協議とは遺産の「山分け」ですので、誰かが多く取れば、誰かが取れなくなるということなのです。

それでは今回の件で、AとBの代理をYが行うとどうなるでしょうか。
Yは、自身が相続人ですから、当然遺産分割協議に参加します。

他方、Aの親権者でもありますから、Aの代わりに遺産分割協議に参加し、Bの親権者でもありますから、Bの代わりに遺産分割協議に参加します。

しかしこうなると、問題が生じてきます。
すなわち、Y自身の相続分だけでなく、Aの分もBの分も全てYが決めるのですから、理論上は、YがAやBの取り分を減らし、自分の取り分を増やすということができてしまうわけです。
これでは、子の財産を守るための親権者の役割に反し、子ども達が不利益を受けることになりかねません。

このような状況を、「利益相反」の状況にあるといいます。
利益相反の状況にある場合、Yは、親権者としてAやBの代理をすることは出来ないとされています。

そして、今回のような状況の場合には、「特別代理人」という第三者を、AやBの代理人として付けなければなりません。
特別代理人は家庭裁判所が選ぶことになっているので、家庭裁判所に選任の申立てをしない限り、遺産分割協議をすることができないのです。

それでは、AとBには、それぞれ同じ1人の特別代理人をつけるということでいいのでしょうか。
実はこれは出来ません。
なぜかというと、Aの取り分を増やそうとすると、Bの取り分が減ってしまう関係にあるためです。
特別代理人がAかB、どちらかに肩入れをすることが出来てしまう状況であるため、これもまた「利益相反」の関係になってしまうわけです。

そのため、今回のような場合には、AとB、それぞれに特別代理人を選んでもらうよう、家庭裁判所に申立てをしなければならないことになります。

それでは、CとDについてはどうすべきでしょうか。
実はCとDについては、どちらか一方だけに特別代理人を付けてもらうよう申立てをすればよいのです。

どういうことかというと、CとDの親権者であるZは、Yと違って「Z自身は相続人ではない」ため、CとDのうち、特別代理人がつかなかった方について、親権者として代わりに遺産分割協議に参加することができるのです。

特別代理人選任の申立ての手続き

特別代理人選任の申立ては、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
必要書類は、通常、申立書の他、親権者の戸籍謄本等の他、どのような遺産分割をする予定かという、遺産分割協議書の案を添付することが必要になります。

まとめ

先ほどの例では、結局、ご相談者Yは、Zに特別代理人が必要であることを説明した上で、特別代理人を選任した上、無事遺産分割協議を成立させることができました。

今回の事例を通じて、特別代理人についての理解を深めて頂き、未成年者が相続人になる場合には、特別代理人のことを思い出して頂ければと思います。

弁護士 國丸知宏 執 筆
KOMODA LAW OFFICE 弁護士
國丸 知宏 TOMOHIRO KUNIMARU
得意分野は相続問題。
相続LOUNGEの動画セミナーで講師も務める。

予約専用
ダイヤル

0120-755-681

Web予約

初回相談無料
遠方対応可能 Zoom等で対応可能です