inheritance basis

相続の基礎知識

相続人は遺言書をどのように扱えばいいの?

2021.04.19

ご家族が遺言書を作成しているかご存じですか?
もし、ご家族が亡くなった後で遺言書が見つかった場合、相続人は遺言書をどのように扱えば良いのでしょうか。

ここでは、遺言書の扱い方や注意点についてご説明いたします。

1.遺言書について

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」があります。

まずは、それぞれの違いについてご説明いたします。
「自筆証書遺言」とは、遺言者(被相続人)が遺言の内容を手書きで記載する遺言書のことをいいます。
この場合、遺言者が亡くなった後に、遺言書を管轄の家庭裁判所に提出し、検認の手続きを行う必要があります。
「検認」とは、遺言書の形状や日付・署名など、遺言書の内容を明確に確認するための手続きです。

これは、遺言書の法的有効性を判断するものではありませんので、間違えないようにしましょう。
そして、実際に検認手続きを行うときは、管轄の家庭裁判所(遺言者の最後の住所地)に相続人と利害関係人が集まり、立ち合いのもと、裁判官が遺言書を確認します。

確認した結果については、検認調書として裁判所に保管され、「検認済み」と遺言書に表示がされた上で、提出者に返還されます。
また、遺言書の検認は、遺言書の原本を保管していた人が裁判所に提出する形で行いますが、遺言書を保管している人がいなかったときは、遺言書を見つけた人が裁判所で検認の手続きを行うことになります。

さらに、遺言書が封印されていた場合には、裁判所の検認によってのみ開封することができますので、誤って開封しないように気を付けましょう。

なお、相続法の改正により、法務局でも遺言書を保管することができるようになりました。法務局で保管してもらうと、公正証書遺言と同じように家庭裁判所での検認手続きが不要となりますので、今後は法務局で保管する人も増えるのではないかと言われています。

「公正証書遺言」は、遺言者が公証人の前で遺言の内容を伝え、公証人がそれに基づいて文章にまとめたものをいいます。
遺言書を作成するときに、公証人が助言をしてくれるため、難しい内容であってもスムーズに作成することができます。公正証書の作成には、費用が掛かりますが、公証役場で保管がされるため、偽造される恐れがなく安心です。

また、「自筆証書遺言」と違って、裁判所での検認も不要です(自筆証書遺言でも、前述の通り法務局の保管制度を使えば検認は不要です。)。

2.遺言書の内容は誰に伝えたらいいの?

遺言書の内容は、相続人全員に関係があることですので、遺言書を保管している人は遺言書の内容を相続人全員とその他の利害関係者に知らせなければなりません。
「自筆証書遺言」の場合は、検認手続きの際に裁判官と相続人や利害関係人の立ち合いのもとで遺言書の内容を確認しますので問題はありませんが、「公正証書遺言」の場合は、検認手続きがありませんので、遺言書の管理者が遺言の内容を通知しなければなりません。

相続人や利害関係人に通知しなければならないのは、遺言書があることを知らずに、相続財産を処分されてしまうのを防ぐことと、遺留分侵害額請求権を行使することができなくなってしまうためだと考えられます。

遺留分侵害額請求権とは、不平等な遺言や贈与によって遺留分を侵害された相続人が、侵害した人へ遺留分の取戻しを請求できる権利をいいます。

この遺留分侵害額請求権は、遺言書の内容を知ったときから1年間が行使可能期間となり、遺言書の内容をいつ通知したのかが重要なポイントとなりますので、遺言書を保管している人は、相続人へ通知したタイミングを記録しておく必要があります(できれば記録が明確に残るように内容証明郵便で送りましょう。もしくは、メールやLINEなど電子的に記録が残るようにしましょう。)。

また、遺言書の取り扱いには注意が必要で、「自筆証書遺言」の場合、保管者が検認の手続きを怠ったり、検認手続き以外で遺言書を開封した場合には、5万円以下の過料に課せられることがあります。また、遺言書の偽造などが発覚した場合には、相続資格を失うことになりますので、遺言書を取り扱うときは気を付けましょう。

3.遺言書の内容には絶対に従わなければならないの?

遺言書は、遺言者の最終的な意思が記載されているため、相続人はこれに従わなければなりませんが、相続人全員が遺言書の内容と異なる相続を希望している場合は、相続人の間で別途協議を行い、相続人全員が合意する形で遺産分割を行うことができます。

しかし、遺言執行者が選任されている場合の遺言書では、遺言執行者は相続内容を実現する義務を負い、相続財産についての管理や処分する権利を有することになります。

さらに、遺言執行者の執行の手続きを相続人が妨げることはできませんので、相続人全員の合意があったとしても、遺言書と異なる内容での遺産分割はできません。
とはいえ、相続人全員が遺言書の内容に反対している状況であれば、遺言執行者の了承を得たうえで、遺言書の内容とは異なった遺産分割をすることが許されるという見解が有力ではないかという意見もありますので、必ずしも遺言書の内容に従わなければならないという訳ではありません。

4.まとめ

遺言書の扱い方についてご説明しました。
遺言書の種類や保管方法によって検認を行わなければならなかったり、間違った扱い方をしてしまうと過料を受けることがあったり、ルールを確認しながら扱わなければなりません。
特に初めて手続きをする場合は、分からないことも多いと思いますので、お近くの法律事務所など専門家へご相談に行かれることをお勧めいたします。

 

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