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遺言書・遺言執行

遺言書の検認手続って何ですか?

2021.04.03

先日、母が亡くなりました。
母が残した遺言書では、母の預金は私が取得することになっていたため、遺言書を持参して銀行に行ったところ、「遺言書の検認手続が終わってからでないと手続ができません。」と言われました。
遺言書の検認手続とはどのような手続なのでしょうか?

また、父の相続の際はそのような手続きをした記憶がなかったのですが、遺言書の検認手続って、必ず必要なのでしょうか?

 

1.遺言書の検認手続とは

遺言書の検認手続とは、家庭裁判所で、相続人立会いのもと、遺言書を開封して、遺言書の原本を確認する手続のことを言います。なぜこのような手続がとられているかというと、遺言書発見後速やかに現状の内容を確定させ、その後の偽造・改ざんや紛失によるトラブルを防止する狙いがあるためです。

具体的な手続内容としては、裁判官が相続人等の立会人の面前で遺言書を開封し、筆跡や印影等を確認し、立会人にも意見があれば陳述させ、確認した結果を検認調書に記載します。
そして、検認終了後は、裁判所の職員が検認済み証明書を作成し、遺言書原本の末尾に添付して、遺言書原本を提出者に返還します。

なお、検認手続は、あくまで遺言書の現状を確認する手続きであり、中身の有効性を判断する手続ではないので、そもそも検認対象となった遺言書自体の有効性を別途争うことは可能です。
また、検認手続によらずに開封してしまったとしても、遺言書の効力に影響はなく有効です。(但し、封印され、かつ封に押印がされている遺言書については、検認手続以外で開封してしまった場合は過料の制裁対象となります。)

2.遺言書の検認手続は必ず必要なの?

遺言書の検認手続は、全ての遺言書で必要とされているわけではなく、自筆証書遺言の形で作成され、かつ法務局で保管をされていない遺言書に必要な手続になります。

自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言書の本文、日付、署名を全て直筆で記載している遺言書のことを言います。
遺言書の種類としては、大きく分けて、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があり、公正証書遺言とは、公証人が公証役場で作成してくれる遺言書です。

公正証書遺言の場合は、内容を公証人が作成し、かつ作成時に遺言者のほか証人も立ち会って作成し、作成完了後は公証役場で保管するため、偽造、改ざんの恐れがなく検認手続は不要とされています。
これに対し、自筆証書遺言の場合、作成後に廃棄、改ざんや偽造されるリスクがあるため、従前は原則として検認手続を経る必要がありました。

しかし、2020年7月10日施行の遺言書保管法により、法務局に保管されている自筆証書遺言については、検認が不要となりました。これは、遺言者が自筆証書遺言を作成後、遺言者本人が自ら法務局に出向き、法務局に保管を委託する手続を踏むため、作成された遺言書の内容に疑義がなく、かつ提出後は法務局で保管されるため、改ざん等のおそれがないことから、検認手続を経る必要がなくなったからです。

なお、法務局に保管せず、自宅等に保管する場合は従来通り検認手続が必要となります。

3.検認手続未了だとどうなるの?

検認手続が未了の場合、遺言書通りの手続をしようとしても、各機関で受け付けてもらえない場合が大半です。

例えば、預貯金の名義変更・解約等の手続きをしようとしても、金融機関では、検認が必要な遺言については、検認済みの遺言書原本や、検認調書の添付を要求する取扱いが一般的となっています。

また、不動産の名義変更手続においても、実務上、検認未了の場合は申請が却下されてしまいます。
なお、検認手続を行わないまま遺言を執行した場合、過料の制裁対象となります。また、故意に遺言書を隠匿した場合、相続人であれば欠格事由に該当します。

4.検認手続の手順・必要書類

検認手続を行う場合の手順、必要書類は以下の通りです。

手順
⑴必要書類を準備して、家庭裁判所に申立て
※申立権者は、遺言書の保管者又は発見した相続人です。
※管轄は、遺言者の最後の住所地の裁判所になります。

⑵家庭裁判所より検認期日の通知
※裁判所の込み具合によります。申立てから1ヶ月以内程度の期日指定が多いです。

⑶検認期日の開催
※申立人以外の相続人が検認期日に立ち会うかどうかは任意です。
不在でも期日は開催され、立ち会わなかった関係者には、裁判所から検認の結果の通知が届きます。

<必要書類>

  • 申立書(遺言書1通につき、収入印紙800円添付)
  • 遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書の写し(遺言書の封が閉じられていない場合)

※遺言書原本は当日に持参します。

5.小括

以上のとおり、自筆証書遺言を作成した場合で、法務局に保管をしない場合は、死後に検認手続をしなければ、事実上遺言執行手続ができません。
検認手続が実施されるまでは一定程度の日数もかかり、手続を行う相続人にとっても負担が大きいものです。
そのため、自筆証書遺言を作成される場合は、相続人の負担を減らすためにも、遺言書作成後は法務局での保管サービスを活用されることをお勧めします。

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