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相続税の基礎知識・手続き

相続財産と相続税について

2021.04.09

相続について考え始めたとき、そもそもどのような財産が遺産分割の対象となり、どのような財産に相続税が課されるか、疑問に思うことがあるのではないでしょうか?今回は、相続財産と相続税について、基本的な考え方を中心にご説明していきます。

一言でいうと、「相続財産」は有形、無形を問わず、相続開始時に被相続人に属した全ての財産がその対象となります。しかし例外もあります。また、遺産分割の対象となる相続財産と、相続税の課税対象となる相続財産の範囲は一致しません。

1.相続財産とは

相続開始時に被相続人の財産に属した経済的価値のある全ての財産が相続財産として遺産分割の対象となり、かつ、これについて相続税が課税されるのが原則です。
しかし、例外として、相続開始時に被相続人の財産に属した財産でも、遺産分割の対象とならない財産があります。例えば、系譜・祭具・墳墓などの祖先祭祀のための財産は、遺産分割の対象とはなりません。慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継することになります。

2.課税財産

①みなし相続財産
相続や遺贈で手に入れたものではないが、実質的には相続で手に入れたものと同じとみなして、相続税が課税される財産のことを「みなし相続財産」といいます。具体的には生命保険金や死亡退職金などが、それにあたります。ただし、生命保険金や死亡退職金には非課税枠があり、全額が課税されるわけではありません。
 
②死亡前3年以内に贈与された財産
 相続税は生前に蓄積した財産に対して死亡時に課税する税金です。ですから、生前に贈与を繰り返すことによって相続税自体の課税を少なくすることが可能です。しかし、その駆け込み的な生前贈与に対する防止策として「死亡前3年以内に贈与された財産」については、相続税の課税価格に加算されることになっていますので、この点には注意が必要です。
ただし、贈与を受けた時点で支払っている贈与税額は相続税額より引くことができるので、「贈与税」「相続税」で二重に課税されることはありません。

3.非課税財産

相続や遺贈により取得した財産であっても、様々な政策的理由から非課税財産として扱われるものがあります。例えば、下記のようなものです。

・生命保険の死亡保険金の一部(500万円×相続人の人数)
・死亡退職金の一部(500万円×相続人の人数)
・墓地、墓石、仏壇、仏具、日常礼拝の用に供しているもの(投資対象および商品として所有しているものを除く)
・宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の者が相続や遺贈により取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
・地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある者またはその者を扶養する者が所得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
・相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄付したもの、あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

4.土地建物はどのように扱われるのか

土地や建物などの不動産は、相続財産として遺産分割・相続税課税の対象です。その評価額については、遺産分割における評価額と課税対象財産としての評価額が異なることがありますので注意が必要です。なお、抵当権がついていても、課税対象財産としての評価額は変わりません。

①遺産分割との関係
土地や建物などの不動産は遺産分割の対象です。その評価額については、遺産分割時点の時価で評価することが原則です。しかし、相続人間の合意が整うのであればどのような評価でも可能です。実際には、時間と費用の節約の為、相続税課税価格や固定資産評価額、不動産業者による簡易査定などを参考にして評価額を決定する例が多くみられます。評価額について相続人間の合意が整わなければ、最終的には遺産分割調停・審判で決定されることになります。

②相続税課税との関係
土地や建物などの不動産は課税対象です。その評価額は時価とされていますが、その評価方法は通達で決められています。遺産分割の場合と異なり、相続人間の協議で自由に決定することはできません。具体的には、土地については路線価あるいは評価倍率での評価が基本となり、これについては国税庁ホームページから取得できる財産評価基準書より、基本となる評価額を調査することができます。建物の場合は、固定資産評価額で計算します。

※路線価とは、道路に面している土地の1平方メートルあたりの評価額のこと。

③不動産を人に貸している場合の注意点
土地建物を賃貸に供している場合でも、その土地が遺産分割の対象となり、かつ相続税課税の対象となります。ただし、賃借権の負担があるために、自用地より相続税課税価額が下がります。また、遺産分割協議によって相続人のうち誰が賃貸人たる地位を承継するかを定める必要があります。

④不動産が担保に供されている場合の注意点
土地建物に抵当権や質権が付いている場合でもその土地が遺産分割の対象となり、かつ相続税課税の対象となります。担保に供されている不動産については、被担保債権額を差し引いた金額が不動産の実質的な価値となりますので、相続税課税との関係では評価額に影響はなく、担保権のついていない不動産と同様の評価になります。

5.終わりに

今回は、相続財産と相続税についてご説明しました。被相続人からどのような財産を引き継げるのか、またどのような財産に相続税が課されるのかを知っておくと、相続税を減らすにはどうすればいいのか、生前にどのような準備をしておいたらいいのかなど、次のステップを考えることができるのではないかと思います。
一度「相続」を話題としてご家族とお話しする機会を作ってみてはいかがでしょうか。

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