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弁護士コラム

成年後見人の市町村長申立ての実務

2020.04.22
申立てが検討されるきっかけ

成年後見人の市町村長申立ては、近隣住民や民生委員、地域包括支援センター等といった本人の関係者から、成年後見制度による保護を必要とする高齢者等についての相談や要請が市町村の担当部署に寄せられることがきっかけとなるのが一般的な流れです。

関係者から相談や要請を受けた市町村の担当部署では、関係者等から聞き取った情報に加え、本人と面談して直接得た情報をもとに、現状の本人の周りにどういった問題が存在しているのかや、成年後見制度の利用によってその問題が解決するのか、成年後見制度以外に解決方法が無いか等を慎重に検討します。
市町村によっては、社会福祉協議会の職員や担当の介護支援専門員以外に、弁護士や司法書士といった専門職を交えてケース会議を行うこともありえます。

本人に関する調査の実施

市町村の担当部署において収集した情報をもとに、本人のために成年後見制度を利用する必要性があると判断した場合には、市町村長申立てに向けて、より詳しく本人の状況について実態を把握するために、以下の調査を実施しなければなりません。

⑴本人の心身状況等の調査
まず、本人に対し既に後見開始の審判がなされていないか、また、本人が任意後見受任者との間で任意後見契約を締結していないかを確認するため、法務局で成年後見登記にかかる「登記されていない事の証明書」を取得する必要があります。
この証明書を確認した結果、任意後見契約がなされていることが判明した場合には、市町村は、任意後見受任者に対して後見申立を要請します。そして、任意後見受任者が要請に応じないときに限って、市町村長において申立てることになります。

⑵本人の親族関係の調査
本人の心身状況調査の結果、後見開始(もしくは補佐、補助)の審判申立てが必要であると判断した場合には、本人の親族関係を調査して、申立人となる親族の有無を確認する必要があります。
基本的には、二親等内の親族の存否と、親族がいた場合には申立ての意向確認を行い、親族いずれも申立ての意向がなければ市町村長申立てを行うことが出来ます。

⑶本人の資産及び収支状況の調査
申立てにあたっては、本人の資産及び収支状況も調査する必要があります。
これは、申立書の添付書類である財産目録や収支一覧を作成するためという理由の他に、この段階で本人の資産状況を把握することで、その状況から、どのような後見人が選任されるかといった今後の後見業務について見通しを立てることが出来ます。

家庭裁判所への申立て

後見開始の審判事件は、成年被後見人となる本人の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属します。
市町村の担当者らが申立てに必要な書類を作成・収集し、全て揃った段階で申立てに至ります。
なお、申立てにあたっては、収入印紙や資料取得のために費用が発生します。子の場合において、市町村は、本人に費用を負担させることが適当であると判断した場合には、審判の申立てと同時に、家庭裁判所に対して、費用負担を命ずる審判の職権発動を促す上申書を提出することもあります。

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