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信託

成年後見制度と家族信託の費用の違い

2020.11.04

(1)成年後見の場合

「成年後見制度」の場合、①法定後見と②任意後見で費用が異なることになります。

①法定後見の場合

■申立時にかかる費用
家族信託と成年後見制度の費用の違い申立時には、(i)家庭裁判所に支払う収入印紙代、(ii)医師の鑑定が必要な場合は鑑定料、(iii)申立てを専門家に依頼する場合は専門家に支払う費用がかかります。

(i)については、家庭裁判所に申立てを行う際に、印紙代1万円弱が費用としてかかります。
このとき、家庭裁判所が本人について医師の鑑定を必要と判断した場合には、担当医に支払う鑑定料として、5~10万円程度発生することになります。

なお、申立てをする際には、裁判所に提出する資料として、被後見人の財産目録や収支の資料、申立てに至る経緯の説明文書等、多数の書類を揃えなければならず、家族の方が全て1人で行うにはかなり労力がかかります。
そのため、申立手続を弁護士や司法書士に依頼する方も多いです。専門職への依頼は、10~20万円程度が相場になるようです。

■ランニングコスト
法定後見のランニングコストについては、後見人が親族であれ弁護士などの専門職であれ、自由に報酬は決められず、家庭裁判所が決定します。
専門職が後見人となる場合、原則1年間の後見人の職務内容、被後見人の年間収支・保有財産等をもとに算定されることになり、月額2~6万円となる場合が多いようです。

また、後見人が不動産売却や遺産分割協議に参加するなどして、被後見人の財産を増加させたといえるときには、付加報酬を請求できるので、年額100万円近くの報酬を支払う必要があります。なお、報酬は被後見人の財産から支払われることになります。

親族後見人の場合は、報酬を貰わないことが選択できますが、被後見人が一定規模の財産を保有している場合、後見監督人が選任されることが多くなるため、毎月1万円程度の報酬を後見監督人に支払う必要があります。

②任意後見
の場合
任意後見契約を発動するための申立てを家庭裁判所にする必要があるため、導入の費用は法定後見とだいたい同じくらいになります。
報酬は任意後見契約で自由に決めることができます。

とはいっても、任意後見の場合は、必ず任意後見監督人が就任するため、任意後見人が無報酬と決めても任意後見監督人への報酬が必要になります。
専門職が任意後見人・任意後見監督人に就任した場合、任意後見人報酬が月額3~5万円程度、任意後見監督人報酬が月額1~2万円程度かかります。

(2)家族信託の場合

「家族信託」は、「成年後見制度」に比べると、導入時の費用が一般的に高くなります。
というのも、まず公証役場で公正証書を作成する手数料が必要になります。この手数料は、信託財産が数千万円であれば、3~4万円程度、1億円を超える場合には、10万円を超えるイメージになります。
そして、信託財産に不動産がある場合、信託登記が必要になり、登録免許税として不動産の固定資産税評価額の0.4%(土地の場合は0.3%)がかかることになります。

さらに、家族信託の契約書作成や信託登記手続きは、専門家以外で行うのは困難なため、弁護士や司法書士へ依頼する費用も掛かります。
他方、「家族信託」は信託業法の規制により、法律専門職等が家族信託の受託者になることはできません。

そのため、原則として家族・親族が受託者となり、ランニングコストを想定する必要はありません。もっとも、受託者に信託報酬を支払うことも決めれますが、必要不可欠なものではありません。なお、信託監督人に法律専門家を置く場合には、報酬が必要となります。

そして、「家族信託」は、「成年後見制度」のように一世代限り(例えば、認知症になった父親)のサポートとは異なり、父親と母親のの生涯のサポートや遺族(例えば、障がいのある子どもや浪費癖のある子ども)をサポートする仕組みとして設計することも可能です。
数10年単位でのサポートができることを考えた場合、家族信託はあらかじめ費用が分かり、経済的負担を抑えられる可能性があることからすれば、そのコストは高いとは一概に言えないのです。

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