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遺産相続コラム

認知症になったときに備えて今できること

2024.06.26

監修 後藤祐太郎弁護士

はじめに

日本では高齢化が進む中で、認知症の問題はますます深刻化しています。
認知症は誰にでも起こり得る問題であり、突然の発症により家族が混乱することも少なくありません。こうした事態に備えて、今回は、認知症になった際に直面する具体的な問題点と、その対策方法について、詳しくご説明します。

1.認知症になったらどうなる?

認知症になると、まず日常生活における様々な場面での判断能力が低下します。特に、預貯金の管理が大きな問題となります。預貯金の出し入れは、単なる日常の行為ではなく、法的な契約行為の一部です。認知症になると、この契約行為を適切に行うことが困難になり、結果として預貯金の管理ができなくなります。具体的には施設に入所するために定期預金を解約するなどの行為ができなくなってしまい、資産が凍結してしまいます。
また、保険関係の手続や病院の転院手続も同様に難しくなります。例えば、生命保険の解約や更新手続、病院から別の医療施設への転院など、これらもすべて法的な契約行為です。認知症になると、これらの手続を正確に理解し、遂行する能力が失われるため、本人が希望する医療や介護を受けるための手続が滞る可能性があります。
このように、本人の判断能力がなくなってしまった場合には、自分では財産管理や契約等の法律行為ができなくなってしまうため、「成年後見制度」を利用することになります。成年後見制度では、家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人の代理として財産の管理や契約の代理を行います(成年後見制度については、別の記事で詳しくご説明しておりますので、こちらもぜひご覧ください。)。
認知症になってしまうと、たとえ本人の判断能力があった時期に、「こうしてほしい」と家族に希望していたとしても、成年後見人や裁判所が認めない限り、希望通り手続を進めることはできません。そのような状況を防ぐためにも、家族信託を利用するのが良いでしょう。

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2.家族信託とは

家族信託は、認知症になる前に財産管理を家族に委託するための契約です。信託契約により、財産の管理や運用を家族に任せることで、柔軟に対応できます。
家族信託の基本的な仕組みとしては、委託者(財産を持つ人)、受託者(財産を管理する人)、受益者(財産の利益を受ける人)の三者が登場します。例えば、賃貸物件を所有している場合、管理を息子に任せ(委託者が親、受託者が息子となります。)、賃料収入は親が受け取る(受益者が親となり、委託者と受益者が同一の信託契約となります。)といった契約が可能です。
家族信託のメリットは、認知症になった場合でも財産の管理がスムーズに行える点にあります。通常、認知症になると財産の管理や処分が難しくなりますが、家族信託を利用することで、事前に定めた契約に基づいて柔軟に対応できます。不動産の管理や売却、賃料収入の受取りなど、具体的な管理方法を契約書に明記することが可能ですので、本人の希望に沿った財産管理が実現できるのです。
なお、家族信託契約の内容の詳細な設定や法的な手続には高度な専門知識が必要なため、信頼できる弁護士に相談することをお勧めします。

3.相続税シミュレーション

認知症になる前に相続税対策を行うことも重要です。
相続税申告が必要になるかどうかは、遺産の総額が基礎控除額を超えるかにより判断します。基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人の人数」で計算しますので、例えば、相続人が2人の場合、4,200万円(3,000万円+600万円×2人)が基礎控除額となります。
遺産について、プラスの財産からマイナスの財産を引いた金額が基礎控除額を超える場合には、相続税申告が必要になります。プラスの財産とは、例えば、現金や預金、不動産、株式、生命保険などがこれに当たります。他方、葬儀費用や未払いの医療費、借金などがマイナスの財産として差し引かれます。また、生命保険の死亡保険金については、相続人一人当たり500万円までが非課税となります。
これらの要素を総合的に考慮し、相続税のシミュレーションを行うことが重要です。相続税の申告や計算には専門知識が必要なため、税理士などの専門家に相談することが不可欠です。しかし、認知症になってしまうと、暦年贈与や生命保険に加入するなどの法律行為自体ができなくなってしまうため、結果として相続税対策もできなくなってしまい、多くの相続税を払わなければならな可能性も出てきます。

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4.まとめ

認知症になると、自分で財産を管理することが難しくなりますが、事前に対策を講じることで、スムーズに財産管理を行うことができ、ご自身やご家族が安心して過ごせるようになります。
また、相続税の対策を事前に行うことで、相続発生後、相続人の方々の税負担を軽減することができます。
成年後見制度や家族信託、相続税対策について詳しく知りたい方は、ぜひ当事務所にご相談ください。専門の弁護士が親身になって対応し、最適な解決策をご提案いたします。相続手続がスムーズに進むよう、全力でサポート致しますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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