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事例のご紹介

預貯金の使い込み

2022.12.09

相続のご相談内容~預貯金の使い込み~

今回は、実際の相続のご相談例をもとに、預貯金の使い込みについてご紹介いたします。
60代の女性Aさんが、最近亡くなったお母様の相続についてご相談に来られました。

【Aさんのご相談】
母の相続人は私と姉の2人です。
遺言はなく、遺産は預貯金のみです。
姉とは、預貯金を半額ずつ取得するという話になっているのですが、預貯金が思っていたより少なく、通帳も見せてくれません。
母の財産を管理していた姉が預貯金を使い込んだのではないかと疑っています。

Aさんのお母様は、6年前にお父様と死別され多額の遺産を取得した後、高級老人ホームに入所されました。
5年程前から認知症が進行し、ここ2、3年は意思疎通ができないような状態が続いていました。
Aさんによれば、お母様はお父様の相続の際、1億円近くの預貯金を取得したそうです。
しかし、お姉さんからは老人ホームの費用で預貯金のほとんどを使ってしまった、残りは500万円程度しかないと言われたとのことです。
預貯金の使い込みは、相続人間でトラブルになりやすいところです。
今回は、このような場合にどのように遺産分割協議を進めるべきかご説明いたします。

預貯金の使い込み

使途不明金の調査

預貯金の使い込みが疑われるケースでは、まず預貯金の取引履歴を取得し、使途不明金の調査を行います。

取引履歴とは、金融機関が発行する入出金の一覧です。
取得に必要な書類や手数料等は各金融機関によって異なりますが、口座名義人の相続人であれば取得することが可能です。

Aさんのお母様の取引履歴を確認したところ、確かにお父様の相続直後には1億円の残高がありました。
その後大きな出金として、老人ホームの入居一時金5,000万円の振込みと、毎月老人ホームの利用料30万円の引落しが確認できました。

他にも、3年前からおよそ月1回の頻度で毎回50万円、合計1,800万円がATMから出金されていることが判明しました。
Aさんの姉がお母様の口座を管理していたことから、出金は姉が行ったものと考えられました。

そこで、調査結果をまとめ、Aさんの姉に対し使途不明金1,800万円を遺産に戻すよう求めました。

協議内容

Aさんの姉の回答は、『出金を行ったことは認めるものの全て母からの頼みで出金したもので、お金を渡した後のことは知らない』という内容でした。

預貯金の使い込みを追及した際、相手方からは被相続人が自ら引き出した、または被相続人から頼まれて引き出した、被相続人のために使ったなどの反論がよくなされます。
これらの反論が事実かどうか検証するには、病院や介護施設の記録を入手して出金当時の被相続人の判断能力を調べたり、被相続人のために使ったという場合には領収書等の裏付資料の開示を求めたりすることが重要となります。

預貯金の使い込み

Aさんの場合、老人ホームの介護記録を取り寄せたところ、出金が始まった3年前のお母様は重度の認知症であり判断能力がなかったことが分かりました。

また、お母様の生活に必要な物品は老人ホームが用意しており、利用料以外には特段必要な支出がなかったことも判明しました。
これらの事実を突きつけると、Aさんの姉は預貯金を引き出し、自身の口座に貯蓄していたことを認めました。

こうして使途不明金は全額遺産として扱われ、Aさんの遺産分割協議は無事にまとまりました。

相手方が認めない場合の対応

もし協議でまとまらなければ、使途不明金の問題をどのように解決することになるのでしょうか。

遺産分割協議や調停・審判においては、相手方が使い込みを認めればそれを前提に手続きを進めることができます。

他方、相手方が使い込みを認めない場合は、使途不明金を遺産に組み入れられず、遺産分割手続きにおいて解決することはできません。
別途、民事訴訟として不当利得返還請求等を行うことになり、証拠等で相手方が使い込みをしたことを立証する必要があります。

実際には、遺産分割と別に民事訴訟を行うとなれば双方時間と費用がかかってしまいますので、明らかな証拠があれば協議や調停段階で相手方が使い込みを認めることが多く、反対に証拠が乏しい場合には民事訴訟は断念することも少なくありません。

まとめ

今回は、特に紛争となりやすい預貯金の使い込みについてご説明しました。

他の相続人の使い込みが疑われる方は専門家に依頼し、資料の取り付けと調査を行い交渉を進めることが不可欠です。

ご自身が現在ご両親の金銭管理をされているという方は、後々のトラブルを避けるため、ご自身の家計とは別に口座を管理し領収書等をきちんと保管しておきましょう。
 

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