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認知症と相続対策

2022.08.30

はじめに

ご家族が認知症になられたことをきっかけに、ご家族の抱える資産はどうなるのだろうか、相続対策について何かできることはないかと心配になって、ご相談に来られる方は少なくありません。

認知症と相続対策
ご相談に来られる方の中には、ご家族含め早くから相続対策には興味があったものの、ひとまず体も元気で認知能力にも問題はないからという理由から、具体的な相続対策の話を後回しにしてしまっていたというケースが多く見られます。

その背景には、認知症等になり判断能力が低下すると、どのような相続対策ができなくなるか、世の中に十分に知られていないということがあるかもしれません。
今回は、判断能力の低下によって具体的に何ができなくなるのかについてご説明します。
健康な方も、今一度相続対策について考えてみましょう。

認知症になると何ができなくなるの?

認知症と一言でいっても、その症状や程度は人によって様々です。
認知症になり判断能力が低下した場合には、法的に何ができなくなるのでしょうか

⑴ 遺言書の作成

相続について検討するとき、まず遺言書の作成を思いつくという方も多いかと思います。
既に作成しているという方、今まさに遺言書の作成を検討しているという方、書かないといけないと思いつつも作成できていないという方もおられるのではないでしょうか。
遺言書を作る際には、法律上「遺言能力」というものが必要です
噛み砕いてご説明すると、これは「ご自身がしようとする遺言の内容を理解できているか」という能力のことをいいます。

認知症になったからといって、必ずしも遺言の内容の理解ができなくなるということではありません。
しかし、認知症が進行し遺言の内容を理解できなってしまった場合には、遺言を作成することはできなくなります。
また、仮に認知症が軽度で、何とか遺言書を作ることができたとしても、医師の診断として「認知症」という診断名がついてしまうと、亡くなった後にトラブルが発生する可能性があります。

例えば、自分に不利な遺言書の内容になっている相続人が、医師の診断をもとに、作成時に遺言能力が無かったとして遺言書の効力を争うことも考えられます。
このような紛争を避けるためには、認知症の診断がつく前に遺言書を作成してしまうことがベストです。

認知症と相続対策

⑵ 生前贈与

相続税対策の一つとして、贈与税における基礎控除枠(いわゆる暦年課税)を利用した生前贈与があります。
これは、年間(1月~12月)に110万円までの贈与であれば贈与税が非課税となることを利用して、生前から少しずつ資産を引き継がせ、相続財産を少なくする(相続税を減らす)というものです。

よく勘違いされやすいのですが、この枠内の贈与であるとして贈与税が掛からなかったとしても、死亡日から起算して3年前までの生前贈与には相続税が課されます
つまり、生前贈与から3年以内にお亡くなりになられた場合には、相続税が課税されるということになります。

ただし、この場合でも、相続税は通常贈与税よりも税率が低いため、一定の節税効果はあるといえます。
また、生前贈与から3年が経過してお亡くなりになられた場合には、その生前贈与には相続税も課されません。

そのため、相続税対策として生前贈与がよく用いられているのです。
しかし、生前贈与というのは、法律上「贈与契約」という契約によってなされるもので、贈与者(贈与をする人)と受贈者(贈与を受ける人)の意思表示が合致しなければ成立しません。
贈与者が認知症になり判断能力が低下すると、贈与契約における意思表示に問題があるとされ、契約が取り消されてしまう可能性もあります。
生前贈与についても認知症等になる前に行うことが不可欠です。

⑶ 不動産購入や賃貸

一般に、現預金よりも不動産の方が相続時の評価額が下がるため、相続対策として不動産を購入することを検討されている方もおられることでしょう。

また、不動産を人に貸している場合、それが理由で不動産の評価が下がることがあるため、土地を買って賃貸アパートを建て、賃貸に出すという相続対策もあります。
しかし、生前贈与が贈与契約であるのと同様、不動産の購入は売買契約、借主への賃貸は賃貸借契約という契約になります。

したがって、生前贈与と同じように、不動産購入や賃貸をしようとしても、判断能力が無ければ契約が取り消されてしまうおそれがあります。
つまり、不動産購入や賃貸も、認知症になる前に行わなければなりません。

⑷ その他

以上でご紹介したのはあくまで代表的な相続対策です。
これら以外にも、判断能力がなくなると預貯金の解約や引出し、生命保険の契約、養子縁組、株主としての議決権行使など様々なことができなくなってしまいます。

なお、判断能力がなくなった場合には、通常は成年後見人を付けて財産管理を行うことになります。

まとめ

以上のように、認知症等により判断能力が低下してしまうと、基本的に相続対策は一切できなくなってしまうとお考えいただいて良いでしょう。
ご家族が認知症になられてご相談に来られた方に同様のご説明をすると、両親とも以前から話をしていたのに何も対策ができなかったと悔やまれる姿を目にします。

今まで元気だった方が、突然認知症を発症してしまうことも珍しくありません。
「元気だからまだ大丈夫」ではなく「元気な今だからこそ出来ることを考えよう」と、元気な今しか出来ない相続対策を検討することを強くお勧めします。

 

弁護士 國丸知宏 執 筆
KOMODA LAW OFFICE 弁護士
國丸 知宏 TOMOHIRO KUNIMARU
得意分野は相続問題。
相続LOUNGEの動画セミナーで講師も務める。

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