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遺産相続コラム

10 遺留分(16)遺留分減殺請求権の消滅①

2016.12.09

「遺留分侵害額請求」についてご存知でしょうか。
遺留分侵害額請求とは、本来法定相続人として最低限もらえるはずだった遺産(これを遺留分といいます)が他に贈与又は遺贈されてしまって、最低限の相続分である遺留分すら満足にもらえなかった場合に、その遺留分の限度で、自分の最低限の相続分を確保してほしいと求める請求のことをいいます。遺言書で他の相続人が多くもらうことになっていたり、法定相続人以外の人がもらうことになっていたり、遺言書が存在しているケースでは、それぞれの遺留分がきちんと確保された遺言書になっているとは限りません。むしろ、遺言書を書く時点で、全員の遺留分を確実に確保しながら、配慮の上で遺言書を書くということ自体が相当難易度の高い話ですので、遺言書がある場合には、遺留分が侵害されているケースはそれなりに見受けられるものです。このような時に、あまりもらえなかった側の相続人としては、具体的に何ができるのか、しっかりと把握しておくべきでしょう。
今回は、遺留分侵害額請求権の消滅について解説していきます。
会議
1 遺留分権利者
遺留分侵害額請求権を行使できるのは、兄弟姉妹以外の相続人に限られます。兄弟姉妹は請求権を行使することができないため、気を付けましょう。

2 各相続人の遺留分割合
各相続人の有する遺留分の割合は、「各相続人の法定相続分×遺留分全体の割合」という計算式によって算定されます。
ここでいう遺留分全体の割合とは、相続人が直系尊属のみの場合には3分の1、それ以外の場合には2分の1となります。つまり、一般的な相続においては、法定相続分の2分の1が遺留分となり、親や祖父、祖母のみが相続人となるようなケースでは3分の1が遺留分となります。

3 遺留分侵害額請求権の消滅時効
遺留分侵害額請求権は、以下のいずれかに該当する場合には時効によって消滅します。

① 遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しない時
② 相続開始の時から10年を経過した時

しかし、①については「知った時から1年間」という要件は民法上の一般の消滅時効の規定と比較しても、相当短い期間といえます。
そこで、この点について判示している最高裁昭和57年11月12日判決をご紹介します。

民法1042条にいう「 減殺すべき贈与があったことを知った時」とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知った時であると解されています。
そして、遺留分権利者が贈与の無効を信じて訴訟上争っているような場合は、贈与の事実を知っただけで直ちに減殺できる贈与があったことまでを知っていたものと断定することはできません。
しかし、民法が遺留分侵害額請求権につき特別の短期消滅時効を規定した趣旨に鑑みれば、遺留分権利者が訴訟上無効の主張をしさえすれば、それが根拠のない言いがかりにすぎない場合であっても消滅時効は進行しないとするのは相当でないといえます。
そのため、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者がこれを認識している場合には、事実上及び法律上の根拠があって、遺留分権利者が右無効を信じているため遺留分侵害額請求権を行使しなかったことがもっともと首肯しうる「特段の事情」が認められない限り、贈与が減殺することができるものであることを知っていたものと推認するのが相当であると判示されています。

この判例によると、財産のほとんど全部が贈与されている場合には、その中に遺留分も含まれていることも当然に想定できることから、遺留分権利者は「減殺すべき贈与等があったことを知っ」ていたものと推認されることになります。
したがって、遺留分権利者が相続の開始に加えて、財産のほとんど全部が贈与されていることを知った時から1年間の間に遺留分減殺請求を行使しなければ消滅時効にかかることになります。

このように、遺留分減殺請求の消滅時効の期間はかなり短く、贈与等があったことを知った後すぐに権利行使の準備をしなければ期間内に間に合わないおそれもあります。また、前述の裁判例のように、ケースバイケースで特殊な解釈をされる場合もありますので、確実に専門家に相談しながら対応することをお勧めいたします。
そのため、相続開始後は、このような場合に備えて早めに弁護士に相談するようにしましょう。
 

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監修 菰田泰隆

KOMODA LAW OFFICE(弁護士法人菰田総合法律事務所)

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