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遺留分コラム

遺留分侵害額(減殺)請求権

2016.11.10

現代において、様々な統計データがあるところではありますが、平均的な葬儀費用は約150万円程度と言われております。また、人がお亡くなりになった場合、葬儀以外にも様々必要となるコストがあります。そのため、数百万円程度の死亡保険金は生命保険でカバーしていることが一般的です。そして、生命保険の被保険者が亡くなった場合、受取人として指定されている人が生命保険金を受け取ることになります。

この生命保険金は、遺産とは異なり生命保険契約から発生するものですから、あくまで遺産ではなく受取人固有の財産と言われており、当然に遺留分侵害額請求の対象には入らないのが基本となります。しかし、一定の場合には遺産の一部と評価されて遺留分侵害額請求の対象に入ったり、遺産ではないものの特別受益と評価されて遺留分侵害額請求の対象に入るケースがあります。

では、本来は受取人固有の財産であるあって遺留分侵害額請求の対象に入らないはずの生命保険金が、遺留分侵害額請求の対象に含まれるイレギュラーなケースとはどのような場合でしょうか。

 

まず、受取人が被相続人本人であった場合には、生命保険金は相続開始時において被相続人の財産に含まれることから、遺留分の対象となります。したがって、遺言による指定がない限り、遺産分割協議によってその帰属を決めることになります。

このケースは意外とあるものです。死亡保険金である以上、本人が受取人になっても死亡しているから受け取れないではないかと思うのですが、生命保険契約の時点で受取人を誰にするか決めきれないまま本人が受取人となり、そのまま受取人の変更手続きをせずに時間が過ぎるケースが多いのです。最も多いのは、独身時に受取人を自分で契約して、そのまま結婚しても受取人を変更しなかったケースですね。

 

次に、受取人が相続人であった場合には、原則として遺留分の対象にはなりません。

判例によると生命保険金の受取人を相続人又はそれ以外の第三者に指定あるいは変更する行為は、遺贈又は贈与にあたるものではなく、これに準ずるものということもできないとされています。生命保険金請求権は、受取人たる相続人が自己の固有の権利として取得するため、相続の対象財産には含まれないからです。また、生命保険金請求権は被相続人の死亡時に発生するものであり、生前払い込んだ保険料と等価の関係に立つものでもなく、被相続人の稼働能力に代わる給付でもないため、生命保険金請求権が実質的に被相続人の財産に属していたとみることもできないからです。

そのため、受取人が相続放棄をした場合であっても、生命保険金請求権は受取人固有の権利であることから受取人が取得することができます。

また、受取人が相続人以外の第三者であった場合にも、同様に生命保険金は原則として遺留分の対象とはなりません。

 

もっとも、この場合であっても特別受益にあたる可能性はあります。

判例によると、生命保険金は遺贈又は贈与にかかる財産にはあたらないものの、受取人たる相続人と他の相続人との間の不公平が到底是認できないほど著しいといった特段の事情がある場合には、特別受益に準じて持ち戻しの対象となるとされています。

持ち戻しの対象となるということは、生命保険金を遺留分算定の基礎となる相続財産に加えるということを意味します。

この特段の事情の有無については、単に額を比較するだけでなく、遺産の総額に対する比率や生前における被相続人との同居の有無、介護への貢献度などの諸般の事情を総合考慮して判断します。

例えば、相続人が配偶者と子供の2人であった場合に、配偶者を受取人とする生命保険金が資産の大半を占めており、かつ被相続人の介護は同居していた子供が行っていたのに対して、配偶者は別居しており被相続人との関係が薄かったといった場合には、著しい不公平が生じているといえ、この生命保険金は遺留分の対象となる可能性があります。

ただし、受取人たる相続人が生前被相続人の介護を負担していた場合など、被相続人の財産の維持・増加に対する特別の貢献をした相続人については、その寄与分が考慮されることによって遺留分の対象から外れることもあります。

 

多額の生命保険金を受け取っている相続人や第三者がいる場合に、遺留分侵害額請求権を行使することができるか否かは、個別の具体的な事情によって異なります。

その判断や受取人との交渉を円滑に進めるためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

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