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生前の相続対策

教育資金の一括贈与について考える

2020.10.08

平成25年の税制改正により始まった教育資金の一括贈与(正式名称は「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」)ですが、信託銀行等の金融機関による広告宣伝等により、これまで多くの方が利用され、相続税の節税対策として注目度の高いものでありました。
今回の教育資金の一括贈与について説明していきたいと思います。

1.教育資金の一括贈与

教育資金の一括贈与は、すでに多くの方々がご存じのとおり、直系尊属である父母や祖父母などから子や孫に対して教育に使途を限定した資金を、一括で贈与することにつき贈与税が非課税となる制度です。
うまくこの制度を利用すれば、1,500万円を非課税で一括贈与することができ、通常の暦年贈与の非課税枠が110万円であることと比較しても、その利用価値は大きいものであると思われます。

2.教育資金の一括贈与を深堀して考えてみる

教育資金の一括贈与については、大まかなイメージは上記1で述べたとおりでありますが、この制度について今まで質問を受けてきた事項を中心に、個別論点にスポットをあてて説明していきたいと思います。


  質問1

ひ孫に対する贈与は対象になりますか?

A1

対象となります。
直系尊属から30歳未満の子や孫等への贈与には当然ひ孫も含まれます。


 質問2

叔父からの贈与は対象になりますか?

A2

対象外です。

直系からの贈与でない点がNGとなる根拠です。


質問3

孫が片方の祖父母からすでに1,500万円の贈与を受けていた場合、もう一方の祖父母は贈与できるのでしょうか?

A3

贈与はできません。
通常、孫にとっての祖父母は、4人存在します。すでに片方の祖父母から1,500万円の贈与を受けていた場合には、もう片方の祖父母から1,500万円の非課税贈与は、することができません。
もし、両家の祖父母がこの制度を利用される場合には、事前にお話合いされたほうがよいかもしれません。話合いの結果、両方の祖父母から750万円ずつで合計で1,500万円であれば問題ないということになります。


質問4

子が3人いる場合には1,500万円×4人=6,000万円が非課税と考えてよいでしょうか?

A4

考えて大丈夫です。
それぞれ1,500万円を限度として、贈与税が非課税になる制度です。


質問5

子や孫が30歳になるまでに教育資金で1,500万円使い切れなかった場合、どうなるのでしょうか?

A5

使い切ることが出来なかった残額に、使いきれなかった日の属する年の贈与税がかかることになります。


質問6

贈与者が契約期間中に死亡した場合はどうなりますか?

A6

贈与者の死亡前3年以内にされた贈与から、すでに教育資金として使った金額を控除した残額については、次のいずれかに該当する場合を除き、相続財産として足し戻します。
①受贈者が23歳未満の場合
②受贈者が学校等に在学中の場合
③受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講中である場合

(注)2019年3月31日以前に取得した教育資金については、贈与者が死亡した場合においても課税関係は生じません。


質問7

他の贈与と併用できるものを教えて下さい。例えば、暦年贈与との併用はできますか?

A7

他の贈与と併用できるものとしては、「暦年贈与」、「住宅取得等資金贈与の非課税」、「結婚・子育て資金の一括贈与」などがあります。


質問8

教育資金の一括贈与の申込先は、税務署になるのですか?

A8

いいえ、税務署でなく信託銀行等の金融機関になります。


質問9

手続きで大変な点はありますか?

A9

信託銀行等の金融機関に専用の口座を開設し、教育資金として使った領収書を、その金融機関に提出しなければならない点です。


質問10

利用するにあたって留意しておくべきことはありますか?

A10 

基本、子や孫が30歳になるまでに使い切れるかが留意しておきたい点です。

(当該受贈者が30歳に達した日において、学校等に在学している場合等、該当することについて取扱い金融機関の営業所に届け出た場合を除く)
使い切れなかった場合には、上記質問5の記載のとおり贈与税がかかります。


質問11

贈与時点では孫の大学までの教育資金として贈与されたが、結局大学には進学せずに使い切れなかった場合はどうなるのでしょうか。

A11

当初の目的は関係ありませんので、基本的に30歳までに使いきれない場合には、贈与税がかかります。


質問12

教育資金の一括贈与って、いろいろ考えることや手間があるということでしょうか?

A12

すでに上記で述べた点だけでも、いろいろ検討する事項はあると思います。


質問13

教育資金の一括贈与を使わずに、もっと手軽な方法はありませんか?

A13

教育資金を必要な時に、贈与することです(都度贈与)。
たとえば孫の入学金や授業料などについて、必要なときに必要な金額だけ贈与する方法があります。


質問14

教育資金を、暦年110万円を越えて贈与すると、贈与税がかかりませんか?

A14

教育資金のその都度贈与であれば、110万円を超えていても贈与税は課税されません。
たとえば、医学部の入学金で200万円を都度贈与しても贈与税はかかりません。


質問15

その都度贈与で贈与税がかからないのであれば、なぜ一括贈与があるのですか?

A15

都度贈与ですと、生存中でなければできません。
平均寿命が男性81歳、女性87歳であり、平均寿命をむかえる時点で、孫やひ孫がまだまだ学費のかかる年齢であれば一括贈与は十分に効果を発揮します。
また、万が一認知症になった場合などは、贈与契約自体が成立しませんので、そういった点においても一括贈与は有効となります。
 

3.まとめ

教育資金の贈与の贈与については、一括でするのか、その都度するのか、よく検討された上でうまく利用すると節税効果は絶大なものとなります。
ぜひ今一度、贈与者ならびに受贈者のライフプランと照らし合わせて、贈与をお考えいただけたらと思います。

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