inheritance basis

相続の基礎知識

遺留分とは~遺贈や贈与で対策ができる?~

2019.04.23

民法では、遺言でも贈与でも侵害することができない相続人の最低限度の取得分である「遺留分」を認めています。
その反面で、民法は遺言の自由を認め、誰に遺産を相続させるかを自由に決定できることを原則としています。
実際に相続が発生したときはどちらが優先されるのでしょうか。

1.遺留分とは

「遺留分」とは、民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のことをいいます。(民法第1028条)
遺留分の権利を持っているのは、①配偶者②第一順位の血族相続人(子や孫など)③第二順位の血族相続人(父母、祖父母など)であり、相続人のうち第三順位の血族相続人(兄弟姉妹)は遺留分を有しません。
また、遺留分の割合は、③第二順位の血族相続人が財産の3分の1、それ以外は2分の1となります。

遺留分を有する相続人は、遺留分を侵害する遺贈や贈与があった場合に、遺留分を保全するのに必要な限度で遺留分減殺請求をすることができます。

2.遺贈・贈与・特別受益

① 遺贈

遺贈とは遺言によって遺贈者(財産を渡す人)の財産を受遺者(財産をもらう人)に無償で譲渡することをいいます。
民法上、遺贈には「特定遺贈」「包括遺贈」の2種類があり、「特定遺贈」とは、財産のうち特定の財産を無償で譲渡することです。

例えば、不動産Aを花子にあげて、株式Bを太郎にあげる。」というようなことです。この場合、財産が特定されている必要があるので、遺言書の記載にミスがないよう注意しなければなりません。
また、遺贈する予定の財産の構成が変わった場合には、遺言書の書き換えが必要ですので覚えておきましょう。

次に「包括遺贈」とは、財産の全体に対する配分割合を無償で譲渡することです。
例えば、「財産全体の3分の1を花子に、3分の1を太郎にあげる。」というような方法です。

この場合、受遺者は相続人と同じ権利義務を有し、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も引き継ぐことになります。

「特定遺贈」と違い、配分する割合を決めておけば、財産構成が変わっても対応できるのがメリットだといえます。

② 贈与

贈与とは、贈与者(財産を渡す人)が生きているときに、受贈者(財産をもらう人)に財産を譲渡することをいいます。

生きているときに譲渡が行われるので、「生前贈与」と呼ばれることもあります。贈与の際に気を付けることは、贈与者が贈与したと認識し、受贈者がもらったと認識していることです。贈与したことを証明できるよう贈与契約書などを作成しておくと良いでしょう。

また、相続開始前の1年間のうちに贈与した財産については、遺留分の計算に算入されます。(民法の改正によって、相続人に対する遺贈は、2019年7月1日以降の相続について、過去10年分が遺留分算定に用いられることになります。)

しかし、贈与者と受贈者の双方が遺留分権利者に損害を与える意図を持って財産の贈与がなされた場合は、例外的にその贈与の価格も遺留分の計算に算入されることもありますので気を付けましょう。

③ 特別受益

特別受益とは、複数の相続人の中で、一部の相続人が被相続人から遺贈や多額の贈与によって受けた特別な利益のことをいい、共同相続人間の公平を図るために設けられている制度です。

どこまでが特別受益に当たるのか、基準がとても難しく、例えば、大学の学費や結婚式の費用は特別受益とならず、独立のための事業資金を支援してもらった場合は特別受益になる可能性が高いです。

特別受益にあたるとされた場合は、相続開始1年前であるか、遺留分権利者に損害を与えることを知っていたかどうかに関係なく遺留分計算に算入されます。

そのため、生前贈与は必ずしも遺留分対策にはならないと言えるでしょう。(2019年7月1日施行にて民法が改正され、相続開始前10年間の生前贈与のみが特別受益として遺留分算定の基礎に算入されることになりました。ですので、10年より前の生前贈与であれば、遺留分対策として可能となります。)

3.遺留分減殺請求

これまでご説明してきたように、相続人には最低限受け取ることができる「遺留分」という権利があり、遺留分減殺請求を行うことができます。

請求の方法に制限はなく、口頭、書面、裁判所を通す方法があります。しかし、遺留分減殺請求には時効があり、民法によると、①遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき②相続開始の時から10年を経過したときと定められています。

つまり、相続の開始を知った時から1年が経過している場合と、相続が開始してから10年が経過すると遺留分を請求できなくなります。
そのため、最初に通知をする際は、内容証明郵便等で内容や日付を証明できる形が良いでしょう。

また、遺言書に「遺留分については争わないこと」というような記載があった場合も法律で定められている権利ですので、遺留分減殺請求は可能です。

4.まとめ

遺留分や特別受益についてご説明しましたが、遺留分を正しく計算したり、期限を気にしなければばらなかったり、特別受益にあたるのか判断をしなければならなかったり、決めなければならないことが多く、すべてを自分たちだけで進めるのはとても難しいです。

また、感情的になり話し合いが進まないことも多くあります。
早急に、的確に手続きを行うには、早めに裁判所や弁護士などに相談し、自分たちのケースに合った手続きを進めていくことが大切でしょう。

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