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遺産相続コラム

遺言書の有効性について

2021.01.18

遺言書は揉めない相続において非常に大切なものですが、遺言書があるからこそ相続人間で紛争が生じるという不幸なケースもあるものです。なかなかイレギュラーなケースではありますが、遺言書があるにも関わらず、その有効性について問題となり得る以下の2つのケースについて、解説していきます。

1.複数の遺言書が見つかった場合の遺言書の有効性

遺言書は人生で一通しか書かないイメージだと思いますが、ときに遺言書を何らかの理由で複数書いてしまっているケースもあるものです。
その有効性ですが、複数の遺言書が見つかった場合、まず形式的には、それぞれの遺言がすべて有効となります。しかし、それぞれに記載されている内容が抵触する場合には、後に書かれた遺言によって、前の遺言が撤回されたことになるので、後に書かれた遺言書に記載されている内容が有効となります。ただし、撤回される部分はあくまでも内容が抵触する部分に限られますので、新しい遺言書が見つかったからといって、前に書かれた遺言書の内容すべてが撤回されるという訳ではありません。
なお、遺言書の種類が自筆証書遺言・公正証書遺言いずれであっても、この場合の遺言書の効力の判断基準は同様となります。
一般的には、複数の遺言書に複数の事柄を書き分ける方などほとんどいらっしゃいません。つまり、複数それぞれの遺言書が有効となるケースというのは、預金に関する遺言書、不動産に関する遺言書、生命保険に関する遺言書など、財産ごとに遺言書を書き分けた結果、内容に抵触がなかった場合をいうのです。しかし、そのような書き方をするケースは稀で、一般的に複数の遺言書が見つかる場合には、内容がそれぞれ抵触する「書き換え」の場合が多いものですから、結果的に一番新しい遺言書が効力を持つケースが大半でしょうね。
遺言書

2.遺言書が遺産分割後に出てきた場合

特に自筆証書遺言の場合、ご自宅のどこかに保管してあって相続人が誰も見つける機会がないままに相続手続きが進み、遺産分割が完了してしまうケースは多いものです。公正証書遺言の場合であっても、相続人の方々が公証役場に遺言書の存在を問い合わせないまま遺産分割が終わってしまうこともあり得ます。
しかし、遺言書が無いものとして遺産分割を行った後に遺言書が出てきた場合、被相続人の意思の尊重が最優先であることから、原則として遺産分割は無効となり、相続手続きをやり直すことになります。
遺産分割協議のやり直しが必要なケースには、以下のものがあります。

① 被相続人が遺言と異なる遺産分割を禁止している場合

被相続人は、相続開始から5年以内であれば遺産の分割を禁じることができます(民法908条1項)。

② 遺言によって遺言執行者が選任されている場合

遺言執行者が選任されている場合には、相続人は遺言執行者による遺言の執行を妨げてはならないことから、遺言に従った遺産分割がなされることになります。

③ 遺言書の隠匿が発覚した場合

隠匿した相続人は相続欠格者となることから、相続権を喪失することになります。これによって、相続人でない者が参加していた遺産分割協議は無効となります。

④ 相続人の一人が遺言書によって廃除するものと示されていた場合

廃除された相続人は相続権を喪失することから、同様に遺産分割協議は無効となります。

⑤ 遺言によって法定相続人以外の者に遺贈する場合

当該受遺者を含めて再度遺産分割協議を行う必要があります。ただし、受遺者が遺贈を放棄した場合には、再度の協議は不要です。

他方、遺言書があったとしても相続人全員が合意の上で遺言書の内容に従ず、遺産分割協議を行うことはできますので、相続人全員が遺産分割協議を優先することにつき合意した場合には、例外的に遺産分割のやり直しは不要となります。

遺言には時効がないため、遺産分割が成立した何十年後であっても、上記の原則は変わりません。しかし、期間の経過によって、土地や有価証券の資産価値が変動したり、遺産が分散したりなど、遺産分割のやり直しが難しい場合もあります。
このように、遺産分割のやり直しは難航することが多いです。早めに相続を専門分野とする弁護士に相談することを心掛けましょう。また、このようなケースでは相続税が問題になるケースも多いため、相続税に強い事務所を選ばれることをお勧めします。
 

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監修 菰田泰隆

KOMODA LAW OFFICE(弁護士法人菰田総合法律事務所)

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