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信託

【家族信託】法人でも受託者になれるんです!①~個人と法人の違い~

2023.07.14

「家族信託」契約では、財産を預かり管理する役(これを「受託者」といいます。)を個人だけでなく、法人にすることができます
受託者を法人にできるなんて、何か事業をしている社長さんならまだしも、普通の人には関係ないんじゃないの、と思われる方もいるかもしれません。そうでもないのです。

1.家族信託について

「家族信託」は、親が元気な内に子どもを受託者として親が認知症になったり健康を害したりしたときの財産管理を託すだけでなく、親の死後に孫やひ孫、…等の次の次の世代への財産の管理を託す場合等にも利用されます。
「家族信託」は20年以上の長期間、続けていくことを想定して締結されることがあります。

老々介護という言葉が使われて久しいですが、後期高齢者世代の親から、高齢者世代の子どもを受託者として「家族信託」契約が締結されることも少なくありません。

高齢者世代の子どもが受託者となった場合、残念ながら、その子どもが親より先に健康を害したり認知症になったりすることもあり得ます。
そうすると、「家族信託」を維持することができなくなります。

そのような「個人」の受託者におけるリスクを回避するために「法人」を受託者とすることを検討することは、「家族信託」を設計するすべての人に関係することといえるのです。

2.個人と法人の比較

以上のとおり、受託者を法人とした場合、「家族信託」の契約期間中に受託者が死亡したりなどの理由で家族信託契約が終了することを回避するメリットがあります。
しかし、あらゆるものに一長一短あることは世の常で、受託者を法人とすれば万事うまくいくということはありません。
そこでまず、受託者を個人と法人のどちらにするかを考えるために、両者のメリット・デメリットを比較してみましょう。

(1)個人の場合
メリット

個人が受託者となれば、その個人1人に財産の管理処分権限が集約されます。
そのため、財産の管理処分について即決することができます。

また、法人に比べれば、シンプルで分かりやすい家族信託の仕組みを作ることができます。

デメリット

受託者が「個人」である以上、受託者が死亡や病気・事故で信託事務ができなくなるというデメリットがあります。

受託者がいなくなった場合に次の受託者が決まらなければ、当該家族信託契約は終了します。
また、次の受託者が決まったとしても、受託者が管理している口座をスムーズに引継ぐことができなければ、口座が凍結されるリスクがあります。
これは、実務上、受託者の名前で受託事務を処理するための口座を開設しなければならないために生じるリスクです。
徐々にではありますが、信託契約を根拠に以下に例示する名義による信託口口座を開設することに対応する金融機関が増えているようなので、将来は解消されるかもしれませんが…。

(2)法人の場合
メリット

法人の場合は、「個人」と異なり死亡(倒産することはありますが…)や病気の可能性がないため、業務遂行の安定性が増し、永続性が見込まれます。

また、代表者が死亡したとしても、口座はあくまで法人のものなので、凍結の心配もありません。

デメリット

法人の場合は、利益が発生していなくとも毎年、法人住民税が発生してしまうというデメリットがあります。

法人税という金銭の問題だけでなく、税務申告の手間やその手間を省くための税理士報酬がかかってしまいます。

また、法人を運営するには毎年の定時総会・役員会の開催、役員の改選手続の手間がかかります。
財産の管理処分を行う際に多数決原理で動かなければならない点で、「個人」に比べると、機動力が低下します。
法人の構成員が死亡等により変動したことで、当初の委託者の想いとずれが生じる可能性もあります。

3.どの法人を受託者にするのか

受託者となる法人には、①株式会社、②合同会社、③一般社団法人が典型的な選択肢として挙げられます。
昔は「有限会社」がありましたが、現在は新規に設立できません。

なお、各法人のメリット・組織形態まで解説していると「家族信託」の説明から大きく外れ、紙幅も足りなくなるので今回は割愛させて頂きます。

上記の3種類をざっくり分けると、①と②は、商売で売上を立てることを目的とする「営利法人」というグループになります。
一方、③は「非営利法人」に区分されますが、更に「営利型」か「非営利型」があります。

「家族信託」は、家族・一族の財産管理を長期に渡って担い、老親のサポート・子孫へと財産を受け継がせていくことを目的としていることが多いため、純粋な営利目的ではないため、③の一般社団法人を新規で設立する方が多いようです。
法人の方が長期・安定的に信託財産を管理できるからです。
また、家族・一族以外の従業員にとって、プライベートな財産管理との線引きがあいまいな会社ではモチベーションが下がる可能性も否定できないからです。

4.さいごに

今回は、家族信託における受託者の個人と法人について、説明しました。
それぞれメリット・デメリットがありますので、よくご検討されることをおすすめします。
次回は「法人を受託者とする場合の課題」について、解説いたします。
 

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