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信託

【家族信託】法人でも受託者になれるんです!②~法人を受託者とする場合の課題~

2023.07.18

「家族信託」契約では、財産を預かり管理する役(これを「受託者」といいます。)を個人だけでなく、法人にすることができます。
前回は、家族信託における受託者の個人と法人について説明しました。
前回の記事はこちらから:【家族信託】法人でも受託者になれるんです!①~個人と法人の違い~
今回は、法人を受託者にする場合の課題を説明いたします。

1.報酬を得る方法

法人を受託者とした場合、法人を維持するために法人住民税の均等割り(年間最低7万円)、税理士への税務申告報酬、定期的な役員変更登記の費用などお金がかかります。
運営費を賄うために信託財産から信託報酬を受け取ることが考えられます。
しかし、信託業法では「不特定多数の人の財産を反復継続して預かる場合」には金融庁の免許がなければ信託報酬を受け取ってはいけないと定めています。

そこで、信託報酬を受け取るためには、「不特定多数の」という要件を満たさないようにする工夫が必要です。
一般社団法人では、定款に「家屋・親族のための長期的な財産管理と円満円滑な資産承継を目的とする」等と記載することでこの問題を解決できます。
一方で、株式会社などの営利法人の場合は、理論上不特定多数の方から財産管理を受託できるため、定款の事業目的に「家族・親族の財産管理のための民事信託の引受業務」であることを示す必要があります。
具体的には、「信託業法の適用を受けない民事信託の引き受け」や「○○家一族の財産管理・資産承継を目的とした民事信託の引き受け」のように記載することが考えられます。

2.構成員死亡時の取扱い

株式会社が受託者の場合、株式は財産的価値を持つので、株主死亡時には誰が遺産たる株式を引き継ぐかという遺産相続の問題と経営権の承継はセットで考えることができます。

一方、社団法人は、運営は原則「社員」が皆平等の議決権を持ち、多数決で決定することになります。
ここでいう「社員」は、世間一般でイメージされる会社従業員ではなく、株式会社でいう「株主」に相当します。
「社員」という地位は財産的価値がなく、遺産相続の問題とは別に、一般社団法人の構成員が死亡した場合の新しい社員の入社資格を定款で定める必要があります。

3.一般社団法人はパワーバランスに注意を

一般社団法人の運営は、社員の頭数による多数決原理で意思決定が行われます。

たとえば、親に既婚の子どもが3人いたとします。
長男には4人の子、長女には2人の子、次男には1人の子どもがいたとします。
このとき、社員の死亡に伴う新たな社員の入社資格を「死亡した社員の法定相続人たる直系卑属」とすると、将来は子供が多い長男家族が受託者法人の経営権を掌握してしまいます。

遺産相続争いが法人運営というステージで勃発してしまいます。
そこで、後任となる社員は各家族1人ずつに限定するという案もあります。

4.まとめ

20年以上もの長期間を想定しうる「家族信託契約」を安定的に続けていく方法として、受託者を法人とする方法を説明させていただきました。
当事務所では、受託者が家族信託契約の期間中に死亡してしまうリスクの回避方法もご提示できます。
遺言だけではなく、家族信託契約を利用したいとお考えの方は、当事務所までご相談にいらしてください。
 

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