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その他の相続紛争

民法改正で相続はどう変わったの?押さえておくべきポイント ◆配偶者居住権、配偶者短期居住権◆

2021.01.28

40年ぶりに民法が改正され、それによって相続に関係する法律・制度が大きく変わっています。
改正法の多くが2019年7月1日から既に施行されていますが、内容を詳しくご存じでしょうか?中には、きちんと理解しておかないと、相続人にとって損をしてしまうようなものもあるので、気を付けておきたいところです。

この改正民法は、基本的に法律の施行日より後に発生した相続、つまり施行日より後に被相続人がお亡くなりになったケースでのみ適用されます。施行日より前に被相続人がお亡くなりになられたケースでは、あくまで改正前の民法が適用されることになりますので、ご注意ください。
では、今回の法改正で改正された分野と、気を付けておくべきポイントをご説明します。

1.法改正で何が変わったのか?

今回の法改正で、相続に関して変わったのは大きく記載すると以下の項目です。
①配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設
②特別受益の持戻し免除の意思表示の推定
③預貯金の仮払い制度の創設
④自筆証書遺言の方式の緩和、自筆証書保管制度の創設
⑤遺留分の算定方法の見直し、遺留分減殺請求の効力の見直し
⑥権利取得の対抗要件の見直し
⑦特別寄与料の新設

いろいろと大きく変わったり、制度が新設されたりしていますが、今回は「配偶者居住権、配偶者短期居住権」について具体的に説明していきます。

2.配偶者居住権ってなんですか?

今回の改正で新しく認められた配偶者居住権という権利は、相続人である配偶者が、被相続人名義の居住不動産の所有権を相続しない場合でも、配偶者居住権を取得すれば、その不動産に居住し続けることができるというものです。
簡単に説明すると「残された配偶者が、これまでどおり被相続人名義の不動産に住み続けられる」という権利です。

配偶者居住権は、以下の要件が満たされた場合に効果が生じます。
①配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していたこと
②次のいずれかの場合に該当すること
・遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされた場合
・配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合
③被相続人が相続開始の時において居住建物を配偶者以外の者と共有していないこと

これまでの法制度では、夫(妻)名義の自宅に長年住んでいた配偶者相続人が、遺産分割協議等で不動産を取得できなければ居住の権利が保護されない可能性があり、配偶者が住む家を失ってしまうという不安がありました。

例えば、ある家族の夫が亡くなり、相続財産が自宅不動産3000万円と預貯金3000万円だったとします。
相続人が配偶者とその子どもであった場合、法定相続分通りに相続する場合はそれぞれ2分の1ずつ相続をすることになります。

残された配偶者がこれまで住み続けてきた住む場所を確保するためには、配偶者が自宅不動産を取得することになりますが、自宅不動産のみで法定相続分に達してしまうので、それ以外の現金を貰えないことになってしまいます。

逆に、当面の生活のために預貯金を取得することを選択した場合、預貯金のみで法定相続分に達してしまうので、子どもの協力がないと配偶者は不動産を取得できなくなり、住んでいる家を失ってしまうことになりかねません。

いくら不動産を子供が相続して、その不動産が子供名義になったとしても、残された親を自宅から追い出すなんて考えられないという人もいると思います。それが意外といるものです。実際に、相続した子供から追い出され、その不動産は売却されて、親は長年住み続けた自宅を失ってしまい、子供との間で紛争化してしまったケースを何度も見て来ました。

このような事態を問題視し、残された配偶者がこれまで住んでいた住居で継続して生活ができるように、配偶者居住権は創設されました。

前述のケースで配偶者居住権が認められた場合、自宅を居住権と所有権に分けて相続が可能になりますので、配偶者は自宅不動産の居住権(1500万円)と預貯金の半分を、子は自宅の所有権(1500万円)と預貯金の半分をという相続の仕方ができます。
これにより、残された配偶者は住む場所も当面の生活費も、いずれも確保することができますので、住み慣れた場所で継続して生活を送ることができますね。

3.残された配偶者はずっと自宅に住み続けることができるの?

配偶者居住権の存続期間は、遺産分割協議や遺言で決めることになりますので、遺産分割協議の際、あるいは亡くなった配偶者が残していた遺言書で配偶者が亡くなるまで(終身)という決めかたをしている場合は、残された配偶者は自分が亡くなるまでは自宅不動産に住み続けられることになります。

なお、定められた存続期間が10年など任意の年数であった場合は、その期間が経過するまでは住み続けることができます。

4.配偶者居住権が認められなかったら、すぐに出ていかないといけないの?

要件を満たしておらず、配偶者居住権が認められなかった場合は、今暮らしている自宅から出ていかないといけないのでしょうか?

直ちに立ち退きとなると、残された配偶者にとっては負担が大きくなってしまいますので、その部分を考慮して創設されたのが「配偶者短期居住権」です。
配偶者居住権が認められなかった場合でも、この法制度により、一定期間は居住している不動産に住み続けることができます。

この場合の一定期間とは、「遺産分割により居住建物の帰属が確定した日、または相続開始時から6か月を経過する日のいずれか遅い日」となっていますので、少なくとも相続開始時から6ヶ月間は残された配偶者の居住権は保護されることになります。

5.配偶者居住権の気を付けるべきポイント

配偶者居住権は、残された配偶者に帰属する権利になるので、第三者への譲渡はできません。
また、登記を経なければ第三者に対抗することができませんので、注意しておきましょう。

つまり、不動産を相続した子供が不動産を売却した場合、配偶者居住権の登記をしていなければ、その不動産の買主に対して配偶者居住権があるから住み続けるということを言えなくなってしまいます。

6.まとめ

配偶者居住権、配偶者短期居住権が認められることで、残された配偶者にとっては、より安心してその後の生活を送ることができるようになります。

権利を取得するにあたって注意すべき点もありますので、ご家族の将来を見据えたうえで、選択をしましょう。

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