今回は、遺産分割のご依頼があった際に、基本的な進め方について簡単に説明します。
遺言書の種類や有無・財産状況・相続人などの状況が違うと遺産分割の方法も変わってきます。
1.遺言書の有無
(1)遺言書がある場合
遺言書が全遺産を網羅していれば遺言書によって相続手続が可能です。
※網羅していない場合には漏れている部分について遺産分割協議が必要です。
※遺言執行者が選任されていない場合には相続手続に滞りが出ることもあります。
※時効(1年)に注意が必要です。
(2)遺言書がない場合
遺産分割協議が必要です。
2.遺産の範囲の確定と遺産の評価
(1)相続人の構成の確認
法定相続人が誰かを確定します。
→絶対に必要なのは、被相続人の出生から死亡までの全戸籍です。
必要に応じて必要な戸籍が変わることがあります。
(2)財産調査
ア.財産の範囲を調べる
(ア)不動産
①名寄帳(固定資産課税台帳)の入手
市町村単位で入手可能です。
※固定資産税が非課税の物件は記載されません。
②登記簿の取得
※登記を網羅したものはないので注意が必要です。
(イ)預貯金
①各銀行に一括照会をかける
※JAなど、全国の全支店を調べられないものもありますので注意が必要です。
※全銀行の一括照会の制度は現時点では存在しないため、銀行にあたりを付け調査する必要があります。
(ウ)有価証券
①各証券会社に一括照会をかける
②証券保管振替機構への照会
(エ)生命保険
①各保険会社に一括照会をかける
②一般社団法人生命保険協会への照会
※死亡保険金は原則遺産の範囲に含まれないが、受取人が被相続人の保険や、被相続人より先に受取人が死亡している場合の死亡保険金には相続財産になるので注意が必要です。
イ.財産の評価をを調べる
(ア)不動産
①固定資産評価証明書
※時価の5~7割の相場です。
②路線価・倍率評価(相続税評価額)
※路線価については補正等を考慮する場合は複雑な処理が必要です。
※時価の7~8割の相場です。
③不動産業者による簡易査定
④不動産鑑定士による鑑定評価
※いずれの場合も原則現時点評価とされています。
(イ)預貯金
死亡時の残高がそのまま評価されます。
(ウ)有価証券
・上場株式
遺産分割協議成立時又はその直前の株価が原則です。
・非上場株式
各社の財務諸表から計算されます。
※税務上の評価や鑑定評価に依らざるを得ない場合が多いです。
(エ)生命保険
※受取人が指定されている死亡保険金を除く(具体的には、受取人が被相続人の保険や、被相続人より先に受取人が死亡している場合の死亡保険金等)
死亡日時点の解約返戻金の金額(相続財産となる生命保険金の金額は、通常、死亡日時点の解約返戻金(解約したらいくら戻りがあるか)で評価する)
3.まとめ
次回は不正出金が疑われる場合の対応や、具体的な相続案件での手続き等についてご説明させていただきます。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
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