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相続一般

6 相続の承認と放棄 (6)限定承認 ②

2016.09.21

「限定承認」という相続方法についてご存知でしょうか。結構知られてないですし、活用されてるケースを見る事は私たち弁護士でもかなり稀です。
相続方法には、「単純承認」、「限定承認」、「相続放棄」の3つの方法があります。亡くなった被相続人の財産や債務を全てまとめて相続することを「単純承認」といい、財産や債務の一部だけを相続することを「限定承認」といい、文字通り一切の財産や債務の相続を放棄することを「相続放棄」といいます。
単純承認や相続放棄は一般的な手続きですし、皆さんも耳にする機会がとても多いでしょう。しかし、限定承認については、そのメリット・デメリットを正確に把握している人も少なければ、手続きの流れを把握している人も少なく、相続をあまり取り扱っていなければ弁護士ですら詳しく把握できてないことも多い手続きです。そこで今回は、「限定承認」について詳しく解説していきます。

1.限定承認のメリット

限定承認は、被相続人が債務超過の場合にプラスの財産の限度で財産や債務を相続することで、過重な債務の負担を免れることができます。
また、限定承認はあくまでもマイナスの財産の限度を定めるものであるため、限定承認後に見つかったプラスの財産は、当然に相続することができます。

さらに、限定承認の場合には、不動産等を換価して債務の清算に充てるのが原則ですが、鑑定人の査定した評価額を支払うことで、不動産を優先的に取得することができます(これを先売権の行使といいます)。限定承認が利用される大半のケースがこの不動産取得を目的としたものです。長年住んでいて思い入れのある実家があり、これをどうしても手放したくない、けれども、残された借金が多くて、単純承認するわけにもいかないというケースで、実家の不動産相当額を相続人が支払うことで、実家をきちんと相続しながらも、過大な借金は放棄することが可能になります。

裁判所

2.限定承認のデメリット

一方、限定承認の手続きは、後述のように煩雑で負担が大きいことから、相続方法を決めるまでの熟慮期間の間にこれらを確実に行うことは大変です。特に、相続人全員による申請が必要であることから、相続人の中で一人でも反対者がいれば手続きを進めることができません。
また、限定承認の場合には、被相続人から相続人に財産を譲渡したものとみなされることから、譲渡所得税が課税されるという負担も生じます。

3.限定承認の手続き

限定承認をするには、熟慮期間の間に、相続財産の目録を作成した上で必要書類と共に家庭裁判所に提出して申請する必要があります。熟慮期間とは、相続開始があったことを知った時から3か月とされています。この熟慮期間は各相続人ごとに算定されます。そのため、相続人の一部の者が既に熟慮期間が過ぎており、単純承認したものとされた場合であっても、一人でも熟慮期間が過ぎていない者がいれば、相続人全員で限定承認をすることができます。
提出すべき書類は、相続人全員の戸籍謄本、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、及び被相続人の住民票除票又は戸籍の附票です。

また、相続人が複数いる場合、単純承認や相続放棄は単独で行うことができますが、限定承認は相続人全員で行わなければなりません。相続する財産や債務の範囲が決められる点で相続人全員にとって利害が大きく、全員の事前の了解を要するためです。
なお、相続放棄した者がいる場合は、その者を除いた相続人全員で申請すれば限定承認することができます。

そして、上記申請が裁判所に受理されると、裁判所によって相続財産の管理を行う相続財産管理人が相続人の中から選定されます。相続人が一人の場合にはその者が相続財産管理人となります(ケースによっては専門家が相続財産管理人を務めるべき場合もありますので、その場合は弁護士等が選任される場合もあります。)
さらに、限定承認後5日以内に、全ての債権者及び受遺者に対して、限定承認をした旨を官報に掲載して公告しなければなりません。

4.まとめ

限定承認は3か月という短い熟慮期間に対して、手続きに至るまでの負担が大きく、特に相続人が複数いる場合には、まず相続人間で話し合いをして合意しなければならないため大変な負担となり得ます。通常は検討に時間を要するため、熟慮期間の伸長を行った上で時間を確保し、本当に限定承認をすべきかどうか専門家と相談して決めていくことが多いものです。また、限定承認は上述の通り、手続き自体に相当の時間も要しますし、相当の専門知識が必要な手続きとなります。ご自身のみで対応する事は、現実的になかなか難しいでしょうし、時間的な制約なども考えると専門家に早めにご相談することをおすすめします。
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監修 菰田泰隆

KOMODA LAW OFFICE(弁護士法人菰田総合法律事務所)

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