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特別受益

特別受益の持ち戻しについて、民法改正前に問題になっていたこと

2020.08.18

監修 菰田泰隆 代表弁護士


相続人の中に生前に特別受益を受けた人がいた場合、相続財産の総額に特別受益の額を戻したうえで、相続分の計算をすることを「特別受益の持ち戻し」といいます。

では、改正前の法制度において、この「特別受益の持ち戻し」のどこが問題視されていたのでしょうか?

今回は、なぜ民法が改正されたのか、どのように改正されたのか、誰がその恩恵を受けられるのか等をご説明したいと思います。

例えば、親子間での贈与以外でも、配偶者に今住んでいる自宅を生前贈与したという場合も特別受益にあたりますので、相続が発生した際は特別受益の持ち戻し計算が必要になります。

その際、「特別受益の持ち戻しを免除する」という意思表示があれば別ですが、その意思表示が無かった場合は、相続が発生した後に、自宅を特別受益とした持ち戻し計算が必要になります。

この時に問題視されていたのが、相続財産の額によっては、残された配偶者が自宅以外の財産を相続できない可能性があるという点です。
自宅 相続
例えば、生前夫が妻に自宅不動産を贈与したとしましょう。

その後、夫が亡くなり、相続財産として預貯金が2000万円残っていた場合、妻が生前に夫から貰った不動産は、その贈与が無かったとしたら被相続人の財産に含まれていたものになるため、相続財産に戻して計算をすることになり、各自の相続分を計算する際の財産の額は不動産の額+預貯金2000万円となります。

そして相続人が妻のみだった場合、住んでいる自宅も預貯金も全て受け取れますので、持ち戻し計算を行ってもとくに支障はないといえます。

しかし、妻と子ども1人が相続人だった場合には、法定相続分はそれぞれ2分の1ずつになり、お互い財産を半分ずつ相続できる計算になります。このとき妻は既に夫から自宅不動産を生前に受け取っていますので、前述した法定相続分の通りに相続するとなると、自宅不動産の金額によっては、自宅以外の財産を相続できなくなってしまいます。

確かに、これまで生活してきた自宅はあるのかもしれませんが、住む場所以外の財産が一切もらえなくなってしまうとなると、残された配偶者が生活に困ってしまいます。

この不都合を解消するために、平成30年の民法改正で施行されたのが、「特別受益の持ち戻し免除の意思表示の推定」という制度です。

民法903条4項によると、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住の用に供する建物又は敷地について遺贈又は贈与したときは、その遺贈等について持ち戻しをしない旨の意思表示をしたものと推定されます。これは一般的な感覚としては当然のことであり、その一般的な感覚を当然に法律に落とし込んだだけであって、それまでの法律が少し歪でした。夫が亡くなる際に、夫婦の認識として、自宅を妻に生前贈与したら、その他の財産は妻がもらわなくて良いなんて思っている訳ないですもんね。

これによって、夫婦間で自宅不動産の遺贈等があった場合には、自宅不動産は固有の財産として取得でき、他の遺産を一切相続できないリスクを回避することができます

特別受益に関する悩みを持たれている方は、どのようなケースが特別受益になるのか判断が難しいケースも多く、専門家にしっかり相談して相続手続きを進めるようにすべきです。福岡で相続や特別受益についてお悩みの方は、是非当事務所までご相談いただければと思います。初回相談は無料にて対応させていただいております。
 

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