alive tax

生前の相続税対策

優遇措置を使おう(中級編)

2021.04.11

相続税をわれわれ税理士の視点から考えた場合、税法の優遇措置は数あれど、一般の皆さんからすれば、まず基本的なレベルの優遇措置をおさえられて、次に発展段階のレベルのものを検討するのが自然ではないかと思います。そこで優遇措置といえども、敢えて入門編初級編中級編上級編に4分類し、皆さんの優遇措置への理解を深めて貰えればと存じます。

まず、今回は第3回目で中級編と題して「1.暦年贈与(1年間に110万円の贈与)を繰り返す。」と「2.暦年贈与を法定相続人以外にもする」「3.暦年贈与に特例贈与を上乗せする」の3つの優遇措置をご紹介します。

1.暦年贈与(1年間に110万円の贈与)を繰り返す。

相続税をゼロにするためのテクニックとして、生前に少しずつ財産を贈与するという方法があります。
贈与税の税率は相続税の税率よりも高く設定されているので、一度に大きな金額を贈与 してしまうと、多額の贈与税がかかってしまいます。

しかし、贈与税には一年間に110万円までの非課税枠である基礎控除があるので、この範囲内であれば無税で贈与を行うことができます。
毎年1月1日から12月31日までの間に贈与された財産について計算するので「暦年贈与」と呼ばれています。
贈与を受けた人は税務署へ申告する必要もありません。

たとえば毎年110万円ずつを10年間かけて贈与すれば、合計1,100 万円の資産を無税で移転できるわけです。
相続人が3人なら10年で3,300万円です。
暦年贈与を活用し、非課税の範囲で每年コツコツと贈与を続けることを「連年贈与」と いいます。
簡単かつ長く続けるほど効果の高い方法なので、できるだけ元気なうちからス夕 -卜することか大事です。

贈与するものは株式や金 ダイヤモンドなどでも、評価額が110万円までであれば現金と同じように非課税となります。
株を贈与した後に値上がりすれば、贈与された人は結果として110万円以上の財産を受け取ったことになります。

よく聞く話に、「連年贈与を続けていると、『最初から多額の贈与をしようという意図が あった』と税務署に指摘されて贈与税が課される」というものがあります。そして、その対策として、贈与する時期をずらしたり、額を毎年微妙に変えたりする方法を推奨する方もいらっしゃいます。

しかし実際には、毎年同じ時期に同じ額を贈与していたからといって、税務署に指摘されるケースはほぼありません。
「最初から多額の贈与をしようという意図があった」こと を税務調査官が証明することは難しいですし、証明したところで、労力の割に徴税できる額は少ないからです。

2.「暦年贈与」を法定相続人以外にもする

年間に110万円までの贈与には、贈与税がかかりません。
この暦年贈与は簡単かつ効果的な手法ですが、枠が少ないというデメリットがあります。
もっと資産を減らして相続税対策をしたい人にとっては物足りない額です。

そこで、より多額の贈与をしたいという場合には、子どもだけでなく孫にも対象範囲を 拡大してはいかがでしようか。
孫に対する贈与には、子どもに対する贈与にはないメリットがあります。
それは、「持ち戻し」の対象に含まれないことです。
法定相続人に110万円までの贈与をした後に、もし自分が死亡して相続が発生した場合には、死亡した日からさかのぼって3年間に贈与した財産については、相続税の対象となつてしまうというルールがあります。

つまり、相続税の発生を回避しようとして贈与したのに、そのうちの過去3年分は、相 続財産として再計算しなければならないのです。
これが贈与財産の「持ち戻し」です。
一方、孫は一般的なケースでは法定相続人ではないので、「持ち戻し」の対象になりません。
一度、渡した財産は確実に孫のものになります。

注意点は、単に孫名義の口座を作ってそこに預金をするだけでは、贈与したことにはな らないということです。
贈与された人が自分で印鑑と通帳を管理している口座に振り込む 必要があります。
贈与は契約です。

お互いに「渡す」「受け取る」という事実を認識し、かつ受け取った人がそのお金を自由に使える状態でなければ贈与とはいえません。
生まれたばかりの赤ちやんの口座にお金を振り込んだだけでは、贈与とは認められないのです。

なお、ここでは孫を例に説明しましたが、何も孫に限ったことではありません。ひ孫、 親戚、他人など、法定相続人以外への贈与であっても、年間 110万円までならば非課税になるということです。

3.「暦年贈与」に特例贈与を上乗せする

年間に110万円を超えた贈与に対しては、贈与額に応じて10〜55%の贈与税がかかってきます。
贈与税は、相続税逃れ対策としてできた側面もあるので税率が高いのです。

さて、現在は贈与税の特例が設けられています。
特例贈与では 直系尊属 両親、祖父母などから、20歲以上の子、孫などへの贈与には、一般の贈与税の税率よりも少し低い特例税率が適用されます 。
たとえば 500万円を贈与した時、一般税率で計算した贈与税の額は53万円ですが、特例税率で計算した贈与税の額は 48万5千円となります。
国は、高齢者世代から若い世代へと財産を早く移転させることで、経済を活性化させたいと考えています。
その一つの策として、税率が多少低くなる特例贈与を導入したというわけです。

なお、贈与を受けた人が特例贈与の制度を利用するには、贈与税の申告書や、贈与を受けた人との関係を証明する戸籍謄本などの書類を提出する必要があります。
110万円の暦年贈与だけでは相続対策として効果が低いとお考えの人は、ある程度の贈与税を支払うことにはなりますが、特例贈与が導入されている今のうちに、もう少し踏み込んだ額を贈与することを検討してもいいかもしれません。
特に、孫を養子にした場合には相続税額の2割が加算されることを考慮すると、20歳以上の孫に贈与税率が20%以下となる金額の贈与を行うことは、検討する価値があります。

4.おわりに

ご紹介した「暦年贈与」は相続税対策を行う上で、必ず知識として押さえとかなければならない基本的な事項です。
しっかり、マスターしてください。

世の中、贈与税をを支払うことに、こだわる方もいらっしゃいますが、わたしは、いつも、そのような方にお話しします。
「仮に贈与税率20%の範囲で贈与財産が株式(自社株式も一緒です)であったら、受贈者は8割引きで株式が買えるんですよ。お得だと思いませんか。」と。
まあ、皆様考え方がそれぞれですので、一概には言えませんけど、このような発想の転換も時には必要ではないかと思ったりもします。
参考にされてみて下さい。

電話予約

0120-755-681

Web予約

無料相談は
こちら Zoom等で対応可能です