前回は、相続放棄について、その法的な意味、相続放棄の期限、弁護士が代理人として申述するメリット等について解説させていただきました。
前回の記事はこちら:相続放棄とは? ① ~相続放棄を弁護士へ依頼するメリット~
今回からは、特にご相談の多い相続放棄をする場合に注意すべき点について複数回に分けて解説させていただきます。
前回ご解説したとおり、相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされることになります。
そのため、「相続放棄をすることと矛盾する行為」をすると相続放棄が認められなかったり、仮にその行為を裁判所に報告しないで相続放棄が認められたとしても、後から亡くなった方の債権者から相続放棄は無効であるとして、借金の返済を求められる可能性はあります。
つまり、裁判所はあくまで相続放棄をする相続人の自己申告した内容だけに基づいて相続放棄を認めるかどうかの審査をするだけですので、もしその内容に虚偽や未申告の内容があり、それを亡くなった方の債権者が知って相続放棄は無効であるとして、相続放棄をした相続人に負債を支払うように請求することはなんら禁じられていないことに留意する必要があります。
この「相続放棄をすることと矛盾する行為」とは、亡くなった方の財産を処分したり領得したりなど、相続したことを前提とした行動を指し、法的には「単純承認」といいます。
よくある例として、亡くなった方の遺品を処分したり領得したりするケースです。
亡くなった方の遺品すべてに一切手を付けてはいけないということではなく、いわゆる形見分けという、亡くなった方の遺品のうち価値のないものを貰う分には問題ありません。
また価値が一切なく処分費用が掛かるようなものは処分しても問題はありません。
しかし価値がないという判断は自己判断では難しく、古着等明らかに価値がないものを除いて、業者の見積もりを取る等して価値がないことを裏付けるものを確保しておく必要はあります。
後から相続放棄に支障が出ることがないように事前に相続放棄に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
なお、実際に、債権者から相続人が亡くなった方の価値のある財産を処分したとします。
債権者から相続放棄は無効であるとして、相続人に対して負債を支払うように請求するケースは殆どありません。
しかし法的には請求されるリスクが付きまとい続けるという不安と、実際に請求されるケースも少なからず存在します。
実際に請求されるケース
- 関係者から債権者に対する密告した場合
- 亡くなった方に価値の高い財産があることを債権者に捕捉されている場合
- 亡くなった方が知り合い等の個人から借り入れ、その個人の債権者が相続放棄で借金が帳消しとなることが納得できずに調査をしたりして発覚する場合 等
相続放棄の際に特に気を付けておくべき内容となりますので、その点からも安易に判断せずに、相続放棄に詳しい弁護士に相談されることが望ましいです。
次回も相続放棄の注意するべき点を掘り下げて詳しく解説します!
次回の記事はこちらから:相続放棄とは? ③ ~相続放棄をすることと矛盾する行為 携帯電話の解約や名義変更~
弁護士法人菰田総合法律事務所
福岡を拠点とした弁護士法人菰田総合法律事務所は、司法書士法人と税理士法人も有した法律事務所です。
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