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寄与分での紛争

親の介護をしているのだけど、他の相続人よりも多く遺産をもらえるの?

2020.04.06

ご高齢のご両親がおられる方の中で、ご自身が専らまたは主にご両親のお世話をしておられて、他の兄弟姉妹は全くお世話をされないというご家庭も多いのではないでしょうか。
このような場合に、ご自身が他の兄弟姉妹よりも多く相続出来て当然、と思われる方もおられるかもしれませんが、実はそう簡単にはいかないのです。
今回は、ご両親のお世話をされている方が、どのような場合に他の相続人よりも多く遺産を貰えるのかについて、「寄与分」の制度をご説明いたします。

1 「寄与分」とは?

寄与分とは、お亡くなりになった方が生きておられるときに、ある相続人が亡くなった方の財産の増加・維持に寄与した場合に、その相続人に相続において優遇する制度です。
財産を増やした相続人を優遇することによって、他の相続人との不公平を解消するために設けられました。
寄与分が認められる場合とは、被相続人が生前に営んでいた事業をサポートしていたり、被相続人の療養中に看護を行ったり、その医療費を負担していたり、被相続人の生活費を支出していたり、などです。
寄与分が認められると、その分だけ相続人の取得する相続財産が通常よりも増加することになります。

例えば、父が亡くなって(母は既に死去)、姉と弟の子2人が1,000万円の財産を相続するとします。

子2人の法定相続分は2分の1ずつですので、子2人の相続分はそれぞれ500万円です。ですので、原則通りいけば、500万円ずつを相続することになりそうです。
ここで、姉が父を病院に送り迎えしたり、その医療費の一部を自身の貯金から出したりするなどして、晩年の看護を行っていたとします。
これが100万円の寄与分として認められた場合、1,000万円の相続財産から100万円を除いた900万円が相続財産になります。
その上で改めて計算をすると、弟は450万円を相続し、姉は450万円に寄与分の100万円を加えた550万円を相続することになります。

おおよその寄与分のイメージは掴めたでしょうか。

2 「寄与分」が認められる場合とは?

それではここから、寄与分について詳しく見ていきましょう。
寄与分が認められるにはその人が法定相続人の中の1人でなくてはならず、以下に解説するどれかの類型に該当する寄与をしていなければなりません。

⑴ 家業への従事

典型例は、農業や工場を夫婦や親子が協力して行うような場合です。
この場合、例えば、労働に見合った対価(給与や報酬)が支払われていないことが必要です(相応の給与を支払ってもらっている場合は難しく、一切もらっていないか、極めて不十分であることが必要です)。
なお、個人事業主であればいいのですが、亡くなった方が会社経営をしており、その会社に貢献した場合には、あくまで会社に貢献しただけであり、個人に貢献したとはみなされないことがあるので注意が必要です。

⑵ 金銭の出資

典型例は、亡くなった方が事業をする際に資金援助をする場合などがあげられます。
この場合、単に被相続人に事業資金を貸し付けるのでは、相続人に対しても返済を請求できるため、返ってこないという前提での援助となっている場合や、貸付だとしてもそれによって倒産を免れたといった事情が必要となると思われます。

なお、この類型の場合も、個人事業主であればいいのですが、亡くなった方が会社経営をしており、その会社に金銭援助をしたという場合には、あくまで会社に金銭を出資しただけであり、個人に援助したとはみなされないことがあるので注意が必要です。

⑶ 療養看護

典型例は、亡くなった方が生前、病気や障害によって体が不自由な状態にあるときに。世話をした場合です。
この場合、懸命に病気の世話をしたというだけでは寄与分とはならず、本来なら亡くなった方の費用で介護士などを雇わなければならないほどの状態であったところを、その相続人自身の介護のおかげで不要となり、費用の支出を免れたといえるなどの事情が必要となるでしょう。
そのため、完全介護の体制が整った病院に入院していた場合、基本的には特別の寄与とは認められず、医師が近親者の付き添い介護の必要性を認めていたなどの事情が必要となると思われます。

⑷ 扶養

典型例は、亡くなった方の生活費などを負担していた場合です。
親族である以上、どこかのタイミングで何かしらの生活費の援助をすることはあるでしょうから、通常期待される扶養の範囲を超えた後見がなされることが必要です。
例えば、外食に行った場合にその食事代を支払うといった限度にとどまらず、毎月の賃料の全部又は大部分を代わりに支払っていたとか、そこまで行かずとも毎月一定額の金銭援助を長期間行っていたなどの事情が必要となると思われます。
また、援助する方が亡くなった方から全く又はほぼ対価を受けず、無償に近い状態で援助していたことも必要となるでしょう。

⑸ その他

この他にも型は考えられますが、主な類型としては以上のようになります。

3 「寄与分」の計算方法とは?

寄与分の計算については、法律上は様々な事情を考慮するという規定が存在するだけで、明確な基準はありません。
貢献の形も様々ですので、ご自身の貢献がそのような類型に当てはまるのかによって計算方法も変わってきます。
そのため、詳しくは専門家にご相談頂くことをお勧めいたしますが、大まかには以下のようになります。
あくまで1つの考え方であり、個別ケースに応じて修正が必要となりますので、ご注意頂ければと思います。
 

⑴ 家事への従事

貢献した相続人の年間の給与額等×寄与年数
※但し、その相続人の方が無くなった方と同居していた場合などには、それによって浮いた生活費分を控除することもあります。

⑵ 金銭の出資

援助額
※但し、貨幣価値の変動等を考慮します。

⑶ 療養看護

職業介護人の適切な日当額×看護日数

⑷ 扶養

扶養額×期間×(1-貢献した相続人の法定相続分の割合)

4 「寄与分」はどうやって認められるのか?

⑴ 当事者間での話合い

他の相続人と遺産分割協議を行い、そこで寄与分を主張します。そして、他の相続人全員が認めれば協議が成立します。

⑵ 裁判所での話合い

遺産分割協議を行ったものの、他の相続人が納得しない場合は、家庭裁判所において調停や審判を行うことになります。
大まかに説明すると、調停は裁判所での話合い、審判は裁判所に判断してもらう手続をイメージして頂ければと思います。

5  まとめ

ご両親の介護などをしていた場合、「寄与分」という形でそれが認められる可能性はありますが、一定の要件を満たした上で、一定の手続を採った上でなければ、実際にもらえる額が増えるわけではありません。
協議や調停では相続人全員が納得すればそれで纏まりますが、審判では法律に基づいて裁判官が判断をするため、寄与の内容について、客観的資料により裁判所に説明ができない場合には、寄与分が認められないこともよくあります。
実際のところ、客観的資料が不足していることにより、寄与した事実があっても、裁判所に認められないことも寄与分があることや寄与分の金額を具体的に定めることが困難なこともあります。

ご自身が亡くなられたご両親等の介護をされていたという場合には、「寄与分」として実務的に認められるケースかどうかについて、専門家に相談しておくとよいでしょう。

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