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遺言書・遺言執行

その遺言書有効?無効?遺言書の有効性について

2021.05.16

生前に遺言書を作成しておけば遺された家族は揉めないから一安心。

そんなことを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

確かに、遺言書を生前に作成しておくことは重要です。しかし、ただ作成すれば良いという訳ではありません。遺言書はその有効性をめぐり、度々遺された家族の紛争のきっかけにもなってしまいます。

今回は、そんな遺言書の有効性の判断する際のポイントについてお話したいと思います。

1.遺言書が無効となるケース

まず、遺言書が無効となるケースについてご説明したいと思います。

①民法の規定を満たしていない場合

冒頭でもお伝えした通り、遺言書というのはただ自分の言葉で好きに書けば良いというものでは決してありません。所定の要件を満たさなければせっかく作成した遺言書も、効力を生じないということが、法律で定められているのです(民法968条)
具体的にはどのような要件なのかということをご説明します。
今回はもっとも一般的な自筆証書遺言と公正証書遺言についてお話します。

(a)自筆証書遺言の場合
・自筆証書遺言の場合、遺言者が、その全文及び日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。(財産目録は自書である必要はない。)
・財産目録1枚1枚に署名・捺印をしなければならない。(両面である場合は両面とも)
・遺言書の内容の加除・修正を行う際は、遺言者がその場所を示し変更した旨を遺言書に付記・署名し、更に変更箇所に印を押さなければならない。

(b)公正証書遺言の場合
・証人2人以上の立ち合いがあること
・遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
・公証人が、遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ・または閲覧させる。
・遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名・捺印をする。遺言者が署名することができない場合は、公証人がその理由を付記し、署名に代えることができる。
・公証人が、公正証書遺言は上記4つに則り作成した旨を付記し、これに署名捺印をすること。

自筆証書遺言・公正証書遺言を作成する際は、必ず上記を満たしたものでないと、無効となります。無効になってしまった場合も、相続人同士で話し合い、遺言者の意思を尊重し遺言書通りに遺産分割を行うことは可能です。

ただし、遺言書記載の遺産分割方法に納得がいかず、遺言書が無効であることを主張された場合は上記を満たしていないと無効となってしまいます。遺言書を作成する際にはしっかりと要件を確認しましょう。不安な場合は専門家への相談も選択肢の1つでしょう。

②遺言者に意思能力がない場合

遺言者に意思能力(行為の是非の判断能力)がない場合や、認知症などで正気ではない(判断能力がない)時に、訳も分からず作成させられた遺言などは、たとえ先ほど述べた遺言書作成の要件を満たしていたとしても無効になります。
それは、公正証書遺言の場合でも、公証人に病院に行って公正証書を作ってもらっていたとしても、遺言者に正常な判断能力がなければ遺言は無効となります。
なお、年齢で言うと、民法では、遺言能力(遺言の内容を理解し、判断する能力)があることが前提ですが満15歳以上であれば未成年や被保佐人(認知症や病気などにより、判断能力が不十分であると家庭裁判所で審判を受けた人)でも遺言が出来ると定められています(民法961条)。

また、成年被後見人が物事を識別・判断する能力が回復した時は、医師二人以上の立ち合いのもと遺言が可能です。口が聞けない場合も、一定の方式のもとで遺言することが可能です。

以上のように、遺言が無効となるケースが挙げられますが、実際に遺言の無効を主張する際は調停申し立てや訴訟提起を行い争うことになります。事前に専門家へのご相談をお勧めします。

2.遺言書が複数出てきた場合

続いて、万が一遺言書を1通ではなく複数発見した場合はどうなるのか、どの遺言書が有効になるのかご説明します。
遺言書が複数出てきた場合、通常それぞれの遺言は有効です。しかし、それぞれに記載されている内容が抵触する場合は後に書かれた遺言により前の遺言が撤回されたことになります。ですので、後の遺言書に記載されている内容が有効となります。

このように、新たに遺言書が見つかったからと言って、前の遺言書の内容がすべて撤回されるわけではありません。
また、複数ある遺言書が、公正証書遺言と自筆証書遺言2種ある場合の遺言書の効力の判断基準は同様です。遺言書の種類によって異なるわけではありません。

3.遺言書が遺産分割後に出てきた場合

遺言書は無いものとして遺産分割を終え、ふいに遺言書が存在していることが発覚した場合はどうなるのでしょうか?すでに行った遺産分割の内容と遺言書の内容が異なる場合、どうなってしまうのでしょうか?

答えは、原則遺産分割は無効となりますので、遺産分割をやり直すことになります。
このとき、相続回復請求権により、遺言の内容(相続権)の実行を求めることになるのです。もし、話し合いで折り合いがつかない場合は訴訟に移行することになります。
ただし、この相続回復請求権には消滅時効があります。相続権を侵害された事実を知ったとき(遺言書を発見したとき)から5年間行使しない場合は消滅していまいます。

また、相続開始時から20年が経過した場合にも、相続権侵害の事実を知っているか、知っていないかにかかわらず権利が消滅します(除斥期間といいます。)。
なお、遺言書の隠匿が発覚した場合には、隠匿したものは相続欠格となり、相続人とはみなされず相続権が無くなります。(欠格者に子がいる場合はその子が代襲相続人となります。)。

この時、相続人が変わるので、先に行った遺産分割は無効となります。
こういったことが起こらないためにも、遺言書はしかるべき場所(公証役場や法務局など)での保管をお勧めします。

4.まとめ

遺言書の有効性をめぐって今回はお話させて頂きましたが、いかがでしょうか。せっかく遺言書を作成したなら、その遺言が確実に有効に・実現されて欲しいですよね。
ご自身の想い描いた相続を実現するためにも、ぜひ一度専門家へのご相談をおすすめします。

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