trouble will

遺言書が原因の紛争

遺言の効力とは?

2021.03.30

最近、相続に関する紛争が増加しているのはご存知でしょうか?

原因としては被相続人、相続人の経済的な格差や高齢社会における介護問題などがあります。
このような相続の紛争を防止するためには、遺言書の作成が重要になってきます。

現在では、遺言書の書き方に関する書籍やホームページなども多く存在するため、手軽に自筆証書遺言として遺言書を残すことができますが、遺言書は、形式的な要件を満たしていないと無効になってしまうため、遺言書を作成する際には形式面の要件を満たしているかのチェックを欠かすことができません。

また、形式面が問題なく、遺言書の内容が有効だとしても、遺言能力の有無などをめぐって多くの裁判が起こされており、裁判において、遺言の効力が否定されてしまうケースも決して少なくはありません。
ここではさまざまな遺言書の事例や効力、注意点についてご紹介し、紛争を避けるための参考にしていただけたらと考えています。

1.自筆であるか問題となった事例

・Aは遺言書を残そうと思ったが病気のため、手が震え、字が書けない状態でした。
そこで、手を妻が支え遺言書を書かせましたが、このような場合でも自書であると認められました。

・パソコンでつくった遺言書は自筆証書遺言として認められていません。
同じようにビデオやテープなどで録画・録音しても法律的には効力がありません。

もっとも、相続法に関する民法の改正により、自筆証書遺言であっても、財産目録については、全て自筆する必要はなく、パソコンで作成してもよいことになりました(どういった場合に、パソコンで作成してもよいのかについては、遺言作成の際に是非当事務所にお問合せください。
また、遺言を作成する際に、自筆証書遺言とは別途に、ビデオレターや、音声を残しておくこと自体は問題ありません。

2.氏名の自書が問題となった事例(氏名が記載されてない遺言書)

Aは、相続人達の争いを避けるために遺言書を残しました。
遺言書の氏名の欄には名字の一部が書かれていませんでしたが、有効な自書による遺言書と認められました。氏名は誰が遺言書を書いたか特定できればいいので、氏名の一部、旧姓、ペンネームのなどでもいいとされています。
とはいっても、あえて争いを引き起こすような氏名をきちんと書いた方がいいでしょう。

3.押印が問題となった事例

・押印が指印でも遺言書は有効です。
・2枚の遺言書に契印がない場合
2枚にわたる遺言書がありました。2枚目には日付・氏名・押印がされていましたが、1枚目と2枚目には契印がありませんでした。全体的にみて1通の遺言書として作成されたものであると確認できるのであれば、有効だと認められました。

もっとも、契印などをしていない場合、1枚目と2枚目が1通の遺言書であるか否かについて争いを引き起こす可能性がありますので、遺言書が複数枚にわたる場合には、契印を押しておいたほうがいいでしょう。

4.日付の記載が問題となった事例

・吉日と記載された場合
遺言書に日付が「令和3年3月吉日」と記載されていましたが、日付の記載をされていないとして、無効な遺書言であるとされました。

・客観的に特定できる日付の記載がされた場合
「60歳の誕生日」や「定年退職の日」など客観的にみて特定できる日付は認められています。

・日付けの誤り
遺言書に記載された日付けが作成した日付けと違っていても、誤りであること及び作成した日付が遺言書から判明する場合は、遺言書は有効とされました。

5.不動産の分け方について

・土地の半分を長男Aに相続させる
この遺言書は長男A以外の相続人と長男Aで土地を共有しなさいというどちらの意味なのか、土地を分割して長男Aに相続させなさいという意味なのかが分からないため、遺言が有効と認められない可能性があります。
分割だとしたらどこで線を引くのかが不明なので、決めておくのが良いですが、その場合、の遺言書の書き方については非常に専門的な記載方法になるため、是非一度弁護士にご相談ください。

・家を長女に相続させる
この書き方だと家屋は対象になりますが、家屋の底地が相続財産に含まれる場合は、土地は対象にならないため、別に遺産分割か法定相続の手続きをおこなう必要があります。おそらく家を相続させるということは、通常家と家の下の底地についても譲り渡したいと思っているのが通常であると思いますので、思いをきちんと実現するためには、土地についても誰に相続させるのかをしっかり遺言書に記載しておいたほうがいいでしょう。

6.預貯金の分け方について

・預貯金を妻と子供達に分ける
この内容だと誰にいくらずつ分けるのかが不明なのでおそらく無効な遺言と判断されてしまうでしょう。誰にいくら(もしくは残高の何分の1)を相続させるのかという金額や、誰に相続させるのかという氏名についても、記載しておいたほうがいいでしょう。

7.遺言執行者が指定されていない場合

遺言執行者は、遺言書の中で指定しておくことができます。
候補者がいない場合は、家庭裁判所に請求して、遺言執行者を選任することもできます。
遺言執行者は法律上、相続人の代理人ということです。
遺言執行者がいなくても相続人が遺言書の内容を実現することはできますが、手続きをスムーズに進めるためには遺言執行者を指定しておいた方がいいでしょう。

8.遺言者よりも先に受遺者が亡くなってしまった場合

遺言書を書いた人よりも先に、遺産を受け取る人が亡くなった場合、遺言書の効力は無効になります。
例えばAさんが死亡したとき、Bさんに土地、Cさんに預貯金を相続させる遺言書を残したとしましょう。
しかしBさんが交通事故で死亡したあとに、Aさんが病気で亡くなってしまいました。

この場合、Bさんに土地を相続させる部分については、遺言書は効力を生じなくなり、土地はBさんの相続人とCさんが共同で相続することになり、別途遺産分割協議が必要となります。BさんやBさんの子に土地を相続させたいというAさんの意向をきちんと実現するためには、Bさんが先に死亡してしまった場合に土地を誰に相続させるかについても遺言書で記載しておく必要があります。

9.公正証書による遺言書が無効になった場合

公正証書による遺言書が無効とされることはほとんどありませんが、実際の裁判例では公正証書による遺言書が無効となった場合もあります。

■大阪高判平成26年11月28日判タ1411号92頁
①公証人が事前に遺言内容が遺言者の意思に合致しているか遺言者に直接確認したことはない
②遺言書の内容からすれば、遺言を行うには相応の記憶喚起及び計算能力を必要とするにもかかわらず、公正証書作成時の遺言者は認知症等によって記憶力や特に計算能力の低下が目立ち始めていたのであって、公証人の説明に対する「はい」という返事が遺言内容を理解・認容する趣旨の発言であったかは疑問があることなどからすれば適法な口授があったとは言えないとして公正証書による遺言を無効とした事例。

これは実際にあった事例です。
公正証書は、作成する際に、形式面のチェックは公証人が行うため自筆証書遺言と比べて確実な遺言を作成する方法であるといえますが、遺言者の遺言能力については、時折問題になるケースが少なくないため、公正証書で遺言書を作成する場合であっても、弁護士に一度相談するのがいいでしょう。

10.さいごに

遺言書の効力についてさまざまな事例をご紹介してきましたが、まだまだ注意すべき点はたくさんあります。
1人で悩まずにまずは専門家や弁護士に相談し、残される家族のためにも少しでも争いは減らしましょう。

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