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相続放棄

相続放棄とは? ④ ~相続放棄をすることと矛盾する行為 亡くなった方の名義で契約している賃貸物件に住む~

2023.06.20

今回は、前回に引き続いて特にご相談の多い相続放棄をする場合に注意すべき点について解説いたします。

前回までの記事

1.相続放棄をすることと矛盾する行為

前回のおさらいになりますが、相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされることになりますので、「相続放棄をすることと矛盾する行為」をすると相続放棄が認められなかったり、仮にその行為を裁判所に報告しないで相続放棄が認められたとしても、後から亡くなった方の債権者から相続放棄は無効であるとして、借金の返済を求められる可能性があります。

この「相続放棄をすることと矛盾する行為」について、よく相談を受ける内容は以下のようなものがあります。

① 亡くなった方の携帯電話の解約や名義変更をして良いのか、また相続人の携帯電話が亡くなった方名義で契約していた場合に名義変更して良いのか
② 亡くなった方と同居していた場合にそのまま住み続けてよいのか、賃貸借契約者の名義変更をして良いのか
③ ②の場合に水道光熱費の名義変更をして良いのか
④ 亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか
⑤ 亡くなった方名義の車はどうしたら良いのか、そのまま使用し続けても良いのか、相続人以外が使用するなら良いのか
⑥ 相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか

今回は②の「亡くなった方と同居していた場合にそのまま住み続けてよいのか、賃貸借契約者の名義変更をして良いのか」というよくあるご相談について、解説していきたいと思います。

2. 亡くなった方の名義で契約している賃貸物件に住んでもいい?

まず、賃貸借契約が亡くなった方名義である以上、契約者が亡くなった後もそこに居住する権利(いわゆる賃借権)があるのは亡くなった方の賃借権を引き継いだ者であり、すなわち亡くなった方を相続した者ということになります。
そうしますと、亡くなった方の相続放棄をした以上、そのまま住み続けることはまさしく「相続放棄をすることと矛盾する行為」にあたり、避けるべきといえます。

そのため、出来るだけ早く転居先を見つけて引っ越すか、或いは、賃貸人に事情を説明して亡くなった方の賃借権を承継する形ではなく、新たに賃貸借契約を締結して住み続けることとなります。

3. 相続放棄の留意点

ここで留意すべき点としては、賃貸人次第では、滞納家賃がある場合にはそれを支払うことを条件とされたり、一度明け渡して原状回復をしたうえで再度新規契約をすることを条件とされることがあります。

その場合の滞納家賃や原状回復費用について、亡くなった方の通帳から自動引き落としかつ残高があれば別ですが、相続放棄をした又は手続き中の相続人が亡くなった方の通帳から引き出して支払うことは相続放棄と矛盾する行為です。
支払う場合には、相続人自身の財産から支払う必要があります。

この相続人自身の財産から支払うことは、亡くなった方の負債を代わりに払うことになります。
一見「相続放棄をすることと矛盾する行為」に当たると思われる方もいますが、亡くなった方の財産は何ら処分しておらず、あくまで支払い義務のないものを自らの財産で支払っただけと評価されます。
よって相続放棄に支障はありませんので、ご安心ください。

相続放棄とは? ④ ~相続放棄をすることと矛盾する行為 亡くなった方の名義で契約している賃貸物件に住む~

また、新規契約にあたり、新たに敷金や礼金、場合によっては仲介手数料までも支払うように求められることもあります。
その点はご留意ください。

なお、仮に賃貸借契約の新規契約を拒否された場合、転居先が見つかるまでの間そのまま住み続けると、賃貸人との間でトラブルが発生する可能性があります。
滞納家賃があったり、賃貸人が気難しい性格であったり、亡くなった方と賃貸人との特別な関係性から賃借していた等といった、賃貸借契約の新規契約が拒否される可能性がある場合には、事前に転居先の目途をある程度立ててから、賃貸人に対して賃貸借契約の新規契約を提案することが望ましいと思われます。

今回は、②の亡くなった方と同居していた場合の賃貸借契約の取り扱いについて解説いたしました。
次回は②の場合に水道光熱費の名義変更をして良いのかということについて、解説いたします。
次回の記事はこちらから:相続放棄とは?⑤ ~相続放棄をすることと矛盾する行為 亡くなった方の名義で契約している賃貸物件の水道光熱費の契約~
 

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