houki

相続放棄

相続放棄とは?⑤ ~相続放棄をすることと矛盾する行為 亡くなった方の名義で契約している賃貸物件の水道光熱費の契約~

2023.06.22

今回は、前回に引き続いて特にご相談の多い相続放棄をする場合に注意すべき点について解説いたします。

前回までの記事

1.相続放棄をすることと矛盾する行為

前回のおさらいになりますが、相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされることになりますので、「相続放棄をすることと矛盾する行為」をすると相続放棄が認められなかったり、仮にその行為を裁判所に報告しないで相続放棄が認められたとしても、後から亡くなった方の債権者から相続放棄は無効であるとして、借金の返済を求められる可能性があります。

前回までもお伝えしましたが「相続放棄をすることと矛盾する行為」について、よく相談を受ける内容は以下のようなものがあります。

① 亡くなった方の携帯電話の解約や名義変更をして良いのか、また相続人の携帯電話が亡くなった方名義で契約していた場合に名義変更して良いのか
② 亡くなった方と同居していた場合にそのまま住み続けてよいのか、賃貸借契約者の名義変更をして良いのか
③ ②の場合に水道光熱費の名義変更をして良いのか
④ 亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか
⑤ 亡くなった方名義の車はどうしたら良いのか、そのまま使用し続けても良いのか、相続人以外が使用するなら良いのか
⑥ 相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか

今回は②の「亡くなった方と同居していた場合にそのまま住み続けてよいのか、賃貸借契約者の名義変更をして良いのか」というよくあるご相談について、解説していきたいと思います。

2. 亡くなった方の名義で契約している賃貸物件の水道光熱費の契約

亡くなった方名義で契約している賃貸物件に同居していた場合、前回解説したとおり相続放棄をした相続人名義で賃貸借契約を新規契約すれば問題なく住み続けていくことが出来ますが、水道光熱費の契約はどうしたら良いのか等と悩まれる方が多くおられ、よく相談を受ける内容でもあります。

これまで解説した内容を踏まえますと、水道光熱費の契約者たる地位が亡くなった方である以上、水道光熱費の契約者名義について相続放棄をした或いは相続放棄手続き中の相続人名義に変更することは、「相続放棄をすることと矛盾する行為」といえそうです。

もっとも、実務上は水道光熱費の契約に財産上の価値があるとはいえないため、名義変更をしてもそれが「相続放棄をすることと矛盾する行為」として問題になることはないと考えられています。

賃貸借契約との違いでいいますと、賃貸借契約は通常契約時に敷金を入れていることが多く、それを引き継ぐこと自体が財産的価値のあるものをまさしく相続することになりますし、敷金を入れていないとしても、賃借権という権利は強く保護されており、それ自体に財産上の権利があるという評価もできますので、水道光熱費の契約とは全く異なるものといえるでしょう。

亡くなった方の名義で契約している賃貸物件の水道光熱費の契約

そうしますと、相続放棄が完了する前に水道光熱費の契約者名義を相続人に変更しても良いのではないかと思われますが、財産的価値がないとはいえ水道光熱費の契約者たる地位を引き継ぐという側面があることは否定できないため、相続放棄が完了するまでは名義変更を控えておくのがより無難であると思われます。

相続放棄が完了するまでの間、水道光熱料金が未納となることでライフラインが止められる心配もありますし、その間自ら使用することにより発生した水道光熱費用でもありますので、振込用紙等で相続人の自己固有の財産からその費用を支払っておくことが望ましいといえます。
少なくとも相続放棄をした相続人において被相続人が亡くなって以降自ら使用していた水道光熱費用分は相続放棄をしても自らの債務ですので、支払い義務を免れることは出来ません。

今回は、③の亡くなった方と同居していた場合の水道光熱費の取り扱いについて解説いたしました。

次回は④「亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか」を解説いたします。
 

当サイトのコラムの著作権は法人に帰属します。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。

 

弁護士法人菰田総合法律事務所

福岡を拠点とする、相続案件に特化した法律事務所です。
年間680件以上の相続相談実績、全国対応可能。福岡県内だけでなく、県外からのご相談者様も多数いらっしゃいます。
グループ内に司法書士法人、税理士法人もございますので、遺産分割から、相続登記、相続税申告まで、相続に関することは全てご相談いただけます。

 

電話予約

0120-755-681

Web予約

無料相談は
こちら Zoom等で対応可能です