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相続放棄

相続放棄とは?⑥ ~相続放棄をすることと矛盾する行為 残置物や賃貸借契約の処理~

2023.06.26

今回は、前回に引き続いて特にご相談の多い相続放棄をする場合に注意すべき点について解説いたします。

前回までの記事

1.相続放棄をすることと矛盾する行為

前回のおさらいになりますが、相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされることになりますので、「相続放棄をすることと矛盾する行為」をすると相続放棄が認められなかったり、仮にその行為を裁判所に報告しないで相続放棄が認められたとしても、後から亡くなった方の債権者から相続放棄は無効であるとして、借金の返済を求められる可能性があります。

前回までもお伝えしましたが「相続放棄をすることと矛盾する行為」について、よく相談を受ける内容は以下のようなものがあります。

① 亡くなった方の携帯電話の解約や名義変更をして良いのか、また相続人の携帯電話が亡くなった方名義で契約していた場合に名義変更して良いのか
② 亡くなった方と同居していた場合にそのまま住み続けてよいのか、賃貸借契約者の名義変更をして良いのか
③ ②の場合に水道光熱費の名義変更をして良いのか
④ 亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか
⑤ 亡くなった方名義の車はどうしたら良いのか、そのまま使用し続けても良いのか、相続人以外が使用するなら良いのか
⑥ 相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか

前回はこのうち、③の亡くなった方と同居していた場合の水道光熱費の取り扱いについて解説しました。
今回は④「亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか」について解説いたします。

2.亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよい?

亡くなった方名義で契約している賃貸物件に同居していた場合と異なり、基本的に相続放棄をする相続人がその物件に居住するということは想定されないかと思われます。

このような場合に問題となる典型例が、孤独死して遺体が放置したまま腐敗して特殊清掃が必要となり多額の費用を請求されたり、そのような場合でなくとも滞納家賃や原状回復費用の請求があったり(亡くなった当時滞納家賃がなくとも亡くなった後も家賃は発生し続けるため滞納家賃が発生し続けることはよく起こります)、賃貸物件にある亡くなった方の遺品を引き取るように求められたり等の様々な対応を求められることになります。

相続放棄をする以上は連帯保証人となっていない限り、亡くなった方の賃貸借契約を巡る一切の債務について支払い義務がないため、相続放棄をするため一切関知しないと賃貸人に伝えることになります。
賃貸人から解約届を提出するように求められるケースがよくありますが、賃貸借契約を解約できるのは亡くなった方から賃貸借契約者たる地位を相続した者だけであり、応じるべきではないといえます。

3.不動産業者が賃貸人であったり賃貸管理会社が間に入っている場合

不動産業者が賃貸人であったり賃貸管理会社が間に入っている場合には、相続放棄中のため一切関知できないと伝えればそれ以上色々と要求されることは少ないですが、それでもトラブルになるケースはあります。
特に個人の賃貸人から借りていて賃貸管理会社が間に入っていない場合には、何度も電話がきたり相続人の家まで来たり等、トラブルが発生する可能性がより高まります。

そのため、相続放棄を弁護士に依頼するとともに、その弁護士に賃貸人又はその管理会社との間に入ってもらうのが一番安心かと思われます。
なお、管理会社が間に入っており相続放棄と伝えれば話がスムーズに進む場合でも、亡くなった方の遺品については処理を求められ、少なくとも処分して良いという同意書に署名捺印するように求められます。

亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか

相続放棄をすれば一切関係ないためそれも放置すればよいと思われる方もいるかもしれませんが、法律上相続放棄をしても亡くなった方の財産の管理義務を負うとされています。
そのまま放置した場合、賃貸人が新しい入居者を入れるためにその遺品を別の場所に移動させて管理した場合には、その管理費用を請求された場合その費用を支払う必要が出てきます。
また賃貸人にも迷惑を掛けますので、価値がないものは処分し価値があるものは自宅に持ち帰るなどして管理し続ける必要があるでしょう。

実際の過去の事例において、価値がないものしかなく廃棄費用しか掛からない場合に、賃貸人側から廃棄費用を賃貸人において負担して処分するので、少なくともその同意書が欲しいと言われたケースがあります。
確かに賃貸人側からすれば、相続人が全員相続放棄をしているとはいえ、その遺品を勝手に処分する権限はなく後からもし責任追及されるリスクを考えると処分できません。
相続放棄をしており何ら処分権限はないため、賃貸人が処分しても一切異議を述べないという書面を提出して解決したケースもありますので、まずは相続放棄に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
次の記事はこちらから:相続放棄とは?⑦ ~亡くなった方名義の車~
 

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