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相続放棄

相続放棄とは?⑦ ~亡くなった方名義の車~

2023.06.29

今回は、前回に引き続いて特にご相談の多い相続放棄をする場合に注意すべき点について解説いたします。

前回までの記事

1.相続放棄をすることと矛盾する行為

前回のおさらいになりますが、相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされることになりますので、「相続放棄をすることと矛盾する行為」をすると相続放棄が認められなかったり、仮にその行為を裁判所に報告しないで相続放棄が認められたとしても、後から亡くなった方の債権者から相続放棄は無効であるとして、借金の返済を求められる可能性があります。

前回までもお伝えしましたが「相続放棄をすることと矛盾する行為」について、よく相談を受ける内容は以下のようなものがあります。

① 亡くなった方の携帯電話の解約や名義変更をして良いのか、また相続人の携帯電話が亡くなった方名義で契約していた場合に名義変更して良いのか
② 亡くなった方と同居していた場合にそのまま住み続けてよいのか、賃貸借契約者の名義変更をして良いのか
③ ②の場合に水道光熱費の名義変更をして良いのか
④ 亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか
⑤ 亡くなった方名義の車はどうしたら良いのか、そのまま使用し続けても良いのか、相続人以外が使用するなら良いのか
⑥ 相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか

前回はこのうち、④の亡くなった方が1人暮らしだった場合の残置物や賃貸借契約の取り扱いについて解説いたしました。
今回は⑤「亡くなった方名義の車はどうしたら良いのか、そのまま使用し続けても良いのか、相続人以外が使用するなら良いのか」について解説いたします。

2.亡くなった方名義の車はどうしたら良い?

まず、前回解説いたしましたとおり、相続放棄をした相続人は放棄後も亡くなった方の財産を管理する義務が残ることになります。
そうしますと、亡くなった方名義の車を管理し続ける必要があることになります。
ここで注意すべき点は、管理し続けるということは駐車場に置き続ける必要があるにも関わらず、その車を使用することが出来ないということにあります。

すなわち、亡くなった方名義の車をそのまま使用し続けることは、その車を使用することにより利益を享受し続けることになり、まさしく亡くなった方の財産を相続したものにしか出来ない行為であり、「相続放棄をすることと矛盾する行為」とあたることになります。

さらに注意すべき点は、第三者に対しても使用させることが出来ないということであり、仮に第三者が亡くなった方名義の車を使用していることを知りながら黙認していたとなると、その黙認自体が「相続放棄をすることと矛盾する行為」と判断されかねないということにあります。
使用することもできない車を管理するためだけに永遠と駐車場料金を支払い続ける又は駐車スペースを確保し続けないといけないのではないかと強い懸念を持たれるのも当然かと思われます。

この点、亡くなった方の他の財産の取り扱いと同様に車が無価値であれば処分しても問題ないことになります。
この車が無価値かどうかについて、業者の見積もりを取るのが一番無難な方法ではありますが、高級車でない限り、概ね10年落ちの車で10万キロ以上の走行距離があれば無価値と判断しても問題はないのではないかと思われます。

相続放棄とは?⑦ ~亡くなった方名義の車~

また、亡くなった方の車の管理義務を逃れるもう一つの手段として、法律上相続放棄をした者は引き続きその財産の管理義務を負うとされていますが、まだ相続放棄をしていない相続人がいる場合にはその相続人に通知して管理義務を引き継がせることで、その管理義務から逃れることが出来ます。

この管理義務について、相続放棄の対象者のうち最後に相続放棄をした者は管理義務を引き継ぐ相手がいないため、裁判所に対して相続財産管理人という相続財産の管理人の選任を求め、その管理人に引き継ぐまで財産の管理義務を負い続けることになります。

ただ、この相続財産管理人選任申立てには、実費1万円程度に加えて、弁護士費用だけで税込22万円~33万円、それとは別途相続財産管理人の報酬を担保するために、亡くなった方の財産や相続財産管理人の業務内容に応じて約20万~100万円の予納金を申立人において裁判所に納めることを求められます。
かなりハードルが高いため、車の管理義務を逃れるためだけであれば、現実的ではないのが実情ではあります。

今回は、⑤の亡くなった方名義の車の取り扱いについて解説いたしました。
次回は⑥「相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか」を解説いたします。
 

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