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相続放棄

相続放棄とは?⑧ ~相続放棄をしたら家の管理をする必要はない?~

2023.07.04

今回は、前回に引き続いて特にご相談の多い相続放棄をする場合に注意すべき点について解説いたします。

前回までの記事

1.相続放棄をすることと矛盾する行為

前回までのおさらいになりますが、相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされることになりますので、「相続放棄をすることと矛盾する行為」をすると相続放棄が認められなかったり、仮にその行為を裁判所に報告しないで相続放棄が認められたとしても、後から亡くなった方の債権者から相続放棄は無効であるとして、借金の返済を求められる可能性があります。

前回までもお伝えしましたが「相続放棄をすることと矛盾する行為」について、よく相談を受ける内容は以下のようなものがあります。

① 亡くなった方の携帯電話の解約や名義変更をして良いのか、また相続人の携帯電話が亡くなった方名義で契約していた場合に名義変更して良いのか
② 亡くなった方と同居していた場合にそのまま住み続けてよいのか、賃貸借契約者の名義変更をして良いのか
③ ②の場合に水道光熱費の名義変更をして良いのか
④ 亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか
⑤ 亡くなった方名義の車はどうしたら良いのか、そのまま使用し続けても良いのか、相続人以外が使用するなら良いのか
⑥ 相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか

前回はこのうち、⑤の亡くなった方名義の車の取り扱いについて解説いたしました。
今回は⑥「相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか」について解説いたします。

2.相続放棄をしたら家の管理をする必要はない?

まず、これまで解説いたしましたとおり、相続放棄をした相続人は放棄後も亡くなった方の財産を管理する義務が残ることになります。
そうしますと、亡くなった方名義の家も管理し続ける必要があります。

ここで⑤の車を管理し続けることとの違いで注意すべき点は、車は車庫や駐車スペースで管理しておけば第三者に迷惑をかけることは基本的にないということにあります。

すなわち、家は、築年数が経ち老朽化すると、台風などで瓦が飛んで行って人に当たって怪我をさせてしまったり、草刈りや植木の剪定等をしなければ、草木が生い茂ったり病害虫が大量に発生したりして近隣住民に損害を与える可能性が充分にあります。

その場合、たとえ相続放棄をしたとしても、亡くなった方の財産の管理義務は相続人に残ったままですので、その責任を負うことになってしまいます。
このことを知らないこと方も多く、近隣住民からクレームが来ても放置してのちに訴訟となった事例もあります。

また、損害が生じる程の状況でなくとも、近隣住民からすると手入れがされず草木がどんどん生い茂っていく状況をみて、近くに住んでいる相続人にクレームを言ってくるケースも多く、定期的に草刈や植木の剪定をする必要に迫られるケースも多いです。

相続放棄とは?⑦ ~亡くなった方名義の車~

この管理義務を逃れるためには、前回解説したとおり、まだ相続放棄をしていない相続人がいる場合にはその相続人に通知して管理義務を引き継がせることで、その管理義務から逃れることが出来ます。

そして、前回解説した車と異なり、この管理義務の責任が大きく負担も大きいことから、多額の費用を掛けても裁判所に対して相続人財産管理人の選任を申立て、管理人に管理義務を引き継がせることも現実味を帯びてくることになります。

ただ、ここで留意すべき点として、確かに法律上は相続放棄対象者のうち最後の相続人に最終的に管理義務を負わせることができ、その相続人が相続財産管理人選任申立をするかどうか判断するという流れにはなるのですが、この相続放棄対象者の範囲が広いため、実際上最初に放棄をした相続人達が相続財産管理人選任申立に掛かる多額の費用を負担するというケースがよくあります。

例えば、父親が亡くなったときに最初に放棄するのは、母親やその子供達であり、その放棄が終わると次は父親の両親、両親が亡くなっている場合又は両親がその後相続放棄をした場合には、父親の兄弟、兄弟が亡くなっている場合にはその子供達、つまり、父親が亡くなった子供の立場からすると、自分が放棄することで、最終的に叔父や叔母だけでなく従兄弟達にまで相続放棄を行ってもらう必要があるためです。

そのため、亡くなった父親に財産がなく負債しかない場合でも、その子供達が叔父叔母や従兄弟達の相続放棄に関する費用まで負担することも実務上よくあることであり、それに加えて家の管理義務まで負担させて、それを免れさせるために多額の費用を負担させることがその関係性から出来ず、子供達が相続財産管理人選任申立に掛かる多額の費用を負担するという構図が出来上がるためです。

3.最後に

これまで、相続放棄について全8回にわたって解説してきました。
これまで解説しましたとおり、相続放棄は非常に複雑な問題をはらんでおり、安易に判断して行動すると取り返しのつかないことになったり、色々な方に迷惑をかけてしまうこともあります。
相続放棄という場面に直面した際には、自分で判断せずに相続放棄に詳しい弁護士に相談することをお勧めいたします。
 

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